ソニーは甦(よみがえ)るか 日経産業新聞編 ~日経記者による再生に向けたラブレター

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ソニーは甦(よみがえ)るか 日経産業新聞編 ~日経記者による再生に向けたラブレター

評者 フレイムワーク・マネジメント社長 津田倫男

 ソニーはホンダと並んで、特別な想いを込めて語られる幸せな日本企業である。本書が描くソニーもそうしたよき伝説を下敷きに、危機の中で懸命に浮上のきっかけを探ろうとしているように見える。本書を一言で表すならば、ソニー番の記者や論説委員によるソニー再生に向けたラブレターと言えよう。

コニカミノルタから取得した一眼レフ事業担当役員が大阪へ本拠を移す話、「もう二度と規格競争に負けない」と創業者の盛田昭夫氏が誓ったと言われるリベンジを果たしたブルーレイ・ディスク開発にまつわるエピソード、任天堂Wiiと激しくつばぜり合いを演じるPS3(プレステ)を巡る厳しい現状、ソニー製リチウムイオン電池が起こした火災事故の顛末、先端半導体「セル」の東芝への売却余話、ハワード・ストリンガー氏が「ソニーしか提供できない価値」の枠組みとして提唱している「ソニー・ユナイテッド」(一つのソニー。ハードとソフトの融合)構想が成功しているように見えるインド、「ソニーを救うイノベーションの担い手」を探す中鉢良治社長(当時)の産学連携の試みなど、ソニーを付かず離れずで取材、論評してきた記者たちが、さまざまな角度から記述、総括する。

読者として寂しいのは、そうした数々のエピソードから、ソニー復活の力強い予兆を確信を持って読み取れないことだ。

本書発売直後に、折しもソニー経営陣の異動が発表された。二頭体制の一人であった中鉢社長が副会長に退き、氏の担当であったエレキ事業(ハード)を含む全事業をストリンガー会長が直接、管掌するシングルトップ体制に変わることが発表された。この有事独裁が吉と出るか凶と出るかまだ不明だが、ソニーファンでなくても無関心でいられないところだ。

日本経済新聞出版社 1680円  272ページ

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