――菅谷さんと大崎さんには以前、この連載にそれぞれご登場いただきました。大崎さんの回では「国際バカロレア(IB)は語学や論理的思考、プレゼン能力といった単なるグローバルスキルを養うためのものではなく、全人教育だ」という話になりました。それは具体的には前回記事でまさに菅谷さんが指摘した「思考力」「多角的なものの見方」「共感力」「柔軟性」を養うものだと思います。IBを取った大崎さんの息子さんも、大量の本を読んでいましたよね。
大崎:はい。IBは文学が中心に据えられたプログラムで、それはリーダーとしての資質、具体的には共感力、創造性、さらには物事を俯瞰して本質を見極める力を養う全人教育を目的としているからです。
例えば、日本文学を読む「日本語」の授業で遠藤周作の『海と毒薬』を読んでいたのですが、人間の良心が集団心理によってどのような影響を受けるのかということを多角的な視点から探り、最終的にはどの登場人物にもっとも共感するか意見を出し合っていました。友だち同士違った意見を交換し合うのが、とても新鮮だったようです。
このような形で、小説だけでなく随筆や戯曲、詩まで1つの作品を通読させるのです。でも、こうした読み方は一朝一夕にできるものではなく、小学生からの読書の積み重ねの最終到達点なのだということは痛感します。
読書を体験につなげるために
―――子どものタイプによって違うのかもしれませんが、親としてお子さんたちに何か読書を促すような働きかけはしてきましたか。
大崎:息子が通っていたニューヨークのモンテッソーリ小学校では、とにかくたくさん本を読ませていました。菅谷さんのお嬢さんが『ヘレンケラー』を題材にした授業を受けたというお話がありましたが、息子の小学校にネイティブアメリカンのアシスタントがいらっしゃった時には、ネイティブアメリカンについて教科横断的に学ぶ機会がありました。
ネイティブアメリカンについての作品を読んだり、NY自然史博物館に行ったり、ネイティブアメリカンの先生が直接教えてくれたり。作品を作ったりすることも含め、とにかく五感で体得させる。体験と学びが融合したアプローチでした。
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