日本人が知らない英国「コロナ病棟」のリアル

現地在住看護師が語る医療崩壊を防ぐ仕組み

不急とされる部門が次々に閉鎖・縮小されたことで手が空いたスタッフが、新型コロナ感染の前線に半強制的に回される代わりに、空いた部門での経済的損失(特にプライベート診療用の病棟、病床)は新型コロナ感染病棟として活用することで国が経済補償を約束した。

日本の保健所と同様の役割を持つNHS111と、救急受け入れの連携も国からのガイドラインを受け、地域レベルでの細かい指示が出された。特に新型コロナ感染、もしくは感染疑いの患者の受け入れ体制については、「receiving unit」と呼ばれる部門の役割や、トリアージの方法まで各病院で細かく規定を出すように国から指示が出て、これによりどのような患者でも拒否することなく受け入れる体制が整った。

患者を大量に受け入れるための病院側の準備負担は大きかった。しかし、経済的な補償に加えて、医療従事者を自由に異動させる権利が与えられた(通常のNHSでは本人の承諾なしに所属部署の異動はさせない)ことで、病院側も動きやすかった。

4500人の引退した医師・看護師が復帰に同意

一方、現場スタッフは健康上の理由がない限りは国からの通達ということで、選択肢も反論の機会もない。多くのスタッフは不満と不安を抱えながらも、前線招集に従うよりほかなかった。

医療従事者の確保に向けて、国が真っ先に行ったのが前記の通達のとおり、引退した医師、看護師の復職要請である。イギリスでは医師も看護師も免許は更新制。そのため一度引退した医療者には特別に免許更新を認める特例を国が出した。3月22日の時点で4500人の引退した医師と看護師が一時的に復帰をする同意をしている。

これに続いて医学生、看護学生の動員もされた。例えば、最終学年の医学生で夏前に卒業予定の学生は「繰り上げ卒業」で早めに卒業し、医師として現場に動員された。卒業まで半年をきった看護学生も看護師として配置、卒業まで半年以上の2年生と3年生に関しては「有給実習」という名目で病棟の手伝いに回した。

ただし、2年生と3年生を前線で働かせることには疑問の声も上がっている。イギリスの看護学校では、規定の実習時間をこなすことが卒業条件。パンデミックの時期なので実習を拒否する選択肢もあるが、それでは実習不足で卒業が遅れてしまう。そのため、やむをえず実習を継続して前線に配置されることもあるのだ。実際、筆者の勤務先病棟にも2年生と3年生の看護学生が実習中である。

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