及川光博「2点突破スペシャリスト」という凄み

イメージでくくれないビジネスパーソンの資質

及川さんの俳優業をもう少し掘り下げたときに、気づかされたのは、主人公を筆頭に周りの登場人物を輝かせ続けていること。

「相棒」(テレビ朝日系)では2代目相棒・神戸尊役で杉下右京(水谷豊)を、「信長のシェフ」(テレビ朝日系)では織田信長役で現代からタイムスリップした料理人のケン(玉森裕太)を、「半沢直樹」(TBS系)では数少ない味方の渡真利忍役で社内外の理不尽に立ち向かう半沢直樹(堺雅人)を、そして現在放送中の「グランメゾン東京」でも相沢役で尾花を輝かせています。

及川さんと言えば、1990年代後半にブレイクのきっかけとなった「王子」キャラをいまだにイメージする人も多いようですが、自己主張は決して強くないし、むしろ周囲を引き立てるなど、その立ち位置は意外なほど控えめ。主演もこなせる知名度や実績を持ちながら、常に一歩下がった立場から物語と主人公を盛り立て、助演としての役割をまっとうし続けてきました。

固定化されたイメージの役柄が多い

そのため俳優としての及川さんしか知らなかった人は、アーティストとしてのライブパフォーマンスを見ると「こんなにエネルギッシュな人だったの?」と驚かされるようですが、それも無理はありません。俳優・及川光博に届くオファーは、クール、クレバー、イケメン、キザ、ネアカなど、見る側が固定化されたイメージを持ちやすい役柄が多く、感情や表情が大きく変わり、難易度の高いセリフ回しを求められるようなものは少ないのです。

つまり、「演技派と言われる俳優たちのようなわかりやすい見せ場は少なく、身長174㎝の佇まいも含めて、見る人はエネルギーのようなものを感じにくい」ということ。及川さんはそんな見る人の目線を踏まえた上で、アーティスト活動で見せるエネルギーをあえて封印し、作品と主人公たちを輝かせることに徹しているのではないでしょうか。

だからこそ今後楽しみなのは、俳優・及川光博にそのエネルギーを爆発させる役柄のオファーが届いたとき。俳優・及川光博の新たな姿を見た人々は、「ミッチーの演技はエネルギッシュ」「ミッチーは演技がうまい」という声を挙げるでしょう。あるいは、ライブと同じように及川さんが全面プロデュースする映画やドラマが制作されたときも、エネルギッシュな姿が見られるのかもしれません。「もしかしたら及川さんは自分のキャリアを点ではなく線でとらえ、そのときを待っているのかも……」とも感じてしまうのです。

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