武蔵小杉をあざ笑う人々に映る深刻な社会分断

貧富の差以前に「同じ人」でなくなっている

武蔵小杉について「セレブの町気どりで調子に乗ってるから天罰が下った」と評している書き込みが典型だ。これはある種の「終末観」と「長者没落譚」(富裕者の転落話)を都合よくブレンドしたものだと思われ、「二極化する日本社会」を〝正常な秩序〟に回復する「天の采配」を期待しているとも取れるのである。

民俗学者の宮田登は、「三代続く長者なし」という諺の背後にある「原初的要因として火難・水難が指摘されている」という(『終末観の民俗学』ちくま学芸文庫)。「社会の分断」がこれらの思考に絡め取られるのはまずいだろう。

ここで絶対に忘れてはならないのは、ソルニットが述べているように、どのような災害が振りかかろうとも、結局は日常生活が取り戻されるということである。そして、日常生活こそが本来わたしたちが共同性を紡がなければならない機会であり、それがなければ災害時の危機管理もおぼつかない。

「誰もが被災者になりうる」のに

地球温暖化の影響により、集中豪雨や超大型台風などのこれまで経験のなかったような異常気象が、今後ますます起こりうる可能性は各方面で指摘されている。要は、従来のように過去の降雨量のデータを参考に堤防などを整備したところで、豪雨による氾濫や堤防決壊などのリスクに対処できない可能性が高まるということだ。

「誰もが被災者になりうる」――そんな未曾有の時代に突入しているにもかかわらず、自然の猛威にさらされる被災地を他人事として眺め、いざそれが自分事になると「寄る辺ない」世界にいることに気付く。これがわたしたちの偽らざる〝現在地〟かもしれない。

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 最新の週刊東洋経済
  • コロナ後を生き抜く
  • 小室淑恵 「覚悟の働き方改革」
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
悪用された「ドコモ口座」<br>セキュリティーに3つの問題

「ドコモ口座」を使った預金の不正引き出し事件。背景としては、回線契約がなくても口座が使える「ドコモ口座」自体と、安全性の脆弱なシステムで口座接続していた銀行側の双方に問題がありました。情報漏洩の経路も不明で、今後の対応が問われています。

東洋経済education×ICT