アマゾンのスマホ決済が「日本最重視」の理由 米中テクノロジーの巨人が抱く正反対の思惑
LINEの「LINE Pay」、楽天の「楽天ペイ」、ソフトバンク・ヤフー連合の「PayPay(ペイペイ)」――。国内のIT・ネット大手が今、スマホ決済のサービス開発を急いでいる。来年10月に予定される消費増税における負担軽減策としても、クレジットカードなどを含む「キャッシュレス決済」へのポイント還元が検討されるなど、普及に対する政府側の機運も高まっている。
この市場に目を付けるのは国内企業ばかりではない。米アマゾンは8月末、日本で実店舗向けのスマホ決済サービス「Amazon Pay(アマゾンペイ)」を投入した。ユーザーがレジでQRコードをスマートフォンに表示し、それを店側の端末で読み取る「QR決済」の方式を採る。開始当初の加盟店は東京都、福岡県の数十店舗と小規模だったが、営業範囲を徐々に拡大している。
アマゾンアカウントでそのまま決済
アマゾンペイはこれまで、他のネット通販(EC)サイトでもアマゾンアカウントで決済できるサービスとして、オンラインで加盟店を拡大してきた。日本では劇団四季の公演チケットの購入、デリバリーサービスを展開する出前館の決済などで利用できる。
またアメリカでは、アマゾンが自社展開する書店「Amazon Books(アマゾンブックス)」や、ファッション関連のイベントなど、オフラインで使える決済機能を打ち出し始めている。だが、街中のあらゆる店舗で、かつ常時利用可能なQR決済を手掛けるのは今回が初めて。しかも、現時点では全世界で日本市場だけだ。
アマゾンは祖業のネット通販(EC)のほか、クラウドサービス、スマートスピーカーなど、ほぼすべてのサービスを世界に先駆けて本拠地のアメリカで投入してきた。今回日本から展開を始めたQR決済は、異例のケースといえる。アマゾンジャパンの井野川拓也・Amazon Pay事業本部長も「特にこのサービスに関しては日本で力を入れている」と話す。
アマゾンが日本を重視する背景には、キャッシュレス比率の低さがある。日本のキャッシュレス決済比率は2015年時点で18%。韓国(89%)や中国(60%)、米国(45%)などと比べ圧倒的に現金主義が根強く、それに伴う不便が残っている。「アマゾンとして現金からスイッチする決済手段を提供するにあたり、日本ほど利便性を上げられる”幅”が大きい市場はない」(井野川氏)。
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