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アセモグル教授が読み解く「DeepSeekの衝撃」 テック業界の規模への強迫観念を打ち破った

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2024年のノーベル経済学賞受賞者として注目を集めるマサチューセッツ工科大学のダロン・アセモグル教授は「DeepSeek-R1」の登場をどのように見ているのだろうか(写真:Project Syndicate)

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1月20日にディープラーニング用半導体チップ「DeepSeek(ディープシーク)-R1」が発表されたことを受け、チップメーカーのエヌビディアの株価が大幅に下落し、その他のテクノロジー企業の評価額も急落した。

この出来事を、人工知能における覇権をめぐる米中の競争における「スプートニク・ショックのような瞬間」と表現する者もいた。アメリカのAI業界に変化が必要なことは確かだが、この出来事はいくつかの難しい問題を提起している。

ゴールドマン・サックスは「大手テクノロジー企業、法人、公益事業者は今後数年間で、AIをサポートするために約1兆ドルの資本支出を行う予定」であると推定している。しかし、私を含め多くの観察者は、長い間、アメリカにおけるAIへの投資と開発の方向性に疑問を抱いてきた。

スケールの大きさに執着

主要企業がほぼ同じ戦略(ただし、メタ・プラットフォームズは一部オープンソースモデルを採用することで、他社とは若干異なるアプローチを取っている)を採用しているため、業界全体がただ一つの機会に賭けているような状態である。

例外なく、アメリカのテクノロジー企業はスケールの大きさに執着している。まだ証明されていない「スケーリング則」を引用し、より多くのデータをモデルに投入し、より多くのコンピューティングパワーを投入することが、より大きな能力を引き出す鍵であると考えている。中には「規模こそがすべてだ」と主張する者さえいる。

1月20日以前、アメリカ企業は、大量のデータセットで事前にトレーニングされた基盤モデルに代わるものを検討することには消極的だった。優先事項を考慮すると、彼らはほぼもっぱら、人間(または人間のような)のタスクを実行することを目的とした拡散モデルやチャットボットに焦点を当てていた。

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