交通系ICカード「導入費用」は半端じゃない システム検証や社員教育の負担も大きい
2013年3月23日に、「PASMO(パスモ)」、「Suica(スイカ)」、「ICOCA(イコカ)」等、全国10種類の交通系ICカード(以下、10カード)の相互利用サービスが開始されてから、5年が経過した。以後、サービス利用可能範囲は徐々に広がり、大都市間の旅行や大都市圏内の移動においては、10カードのうちのいずれか1種類を持っていれば、ほぼ事足りるようになった。
一方、地方ではICカードの”空白地帯”は今なお大きく、また、大都市圏内においても、コスト等が障壁となり、ICカードを導入できていない事業者はまだまだある。
政府は、2015年度に閣議決定した「交通政策基本計画」に基づき、2020年度に向けて、10カードをすべての都道府県で使えるようにするという目標を定めているが、交通系ICカードの導入は、今日、実態としてどの程度まで進んでいるのだろうか。また、今後の利用エリア拡大に向け、どのような施策がとられているのだろうか。
地域独自カードも登場
ご存じの方が多いとは思うが、前提として交通系ICカードには大きく分けて、2種類あることを説明しておこう。一つは上述の10カード系のカードであり、たとえば、JR東日本系のカードである「Suica」は、JR西日本系の「ICOCA」や、福岡市交通局系の「はやかけん」などと相互利用することができる。
もう1種類のカードが、全国で40種類近く発行されている「地域独自カード」と呼ばれるものだ。これらは、発行元の電鉄・バス会社や提携先の地元の一部の路線でしか使えない不便さがある反面、独自の割引サービスの提供や、地元の商業施設との連携等、地域に適した機能・サービスを付加できるメリットがある。
さらに、熊本などの、いくつかの地域独自カードの導入エリアでは、独自カードに加えて、エリア内で10カードも使えるサービスを提供しており、このようなサービスを「10カードの片利用」と呼んでいる。もちろん、独自カードはエリア外で使うことはできない。なお、この片利用サービスの導入にも多大なコストがかかることは、後述する。
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