交通系ICカード「導入費用」は半端じゃない

システム検証や社員教育の負担も大きい

なお、PASMO導入に決まった理由について尾渡氏は「(湘南モノレールの場合は)コスト面ではどちらの方式もほぼ変わりなかった。しかし、首都圏はPASMO、Suicaグループが大多数の中、お客様の利便性を考えても、独自カードで独自色を打ち出していくのは現実的でないと判断した」と話す。

では、ICカードを導入するには、実際、どれくらいのコストがかかるのか。湘南モノレールは、「経営に影響を与える相当額の投資」(尾渡氏)ということで具体的な数字への言及は避けたいとのことだったが、参考になる数字はある。

2015年7月付の国交省資料には、バス354台を保有する事業者の10カード参加の導入費用が3.13億円、バス169台を保有する事業者の地域独自カードの導入費用が2.8億円などの例が掲載されている。

琴電の導入コストは8億円

また、具体的な事例としては、地域独自カード導入済みのエリアに10カードの片利用サービスを導入した案件になるが、下記がある。

熊本県バス協会等(鉄道18駅8編成、バス約1000台)が導入済の地域独自カード「くまモンのIC CARD(熊本地域振興ICカード)」に、2016年3月に10カードの片利用を導入した際の費用は約8億円(熊本県バス協会)に上る。また、その前年には、「でんでんnimoca(ニモカ)」という10カード相互利用が可能なカードを導入済みの熊本市電で、くまモンのIC CARDを使えるようにする事業を、市電を運行する熊本市交通局が1.68億円かけ行っている。

同じく地域独自カード「IruCa(イルカ)」が導入済みの高松琴平電気鉄道(琴電)は、2018年3月3日からバスを除く琴平線・長尾線・志度線の合計52駅で10カードの片利用を開始するが、その総事業費は8.37億円だ。この数字は他メディアの報道によるものだが、琴電に確認したところ、「公式に発表した数字ではないが、誤りではない」との回答を得た。ちなみに、総事業費のうち、国が3分の1を助成するほか、県や沿線自治体も支援する。

これらの例を見れば、ICカード導入は中小事業者にとっては少なからぬ負担が強いられることは明らかだ。尾渡氏はイニシャルコストの内訳は、「システムの導入・検証にかかる費用の比率が大半を占める」といい、そのほか、サーバや駅務機器等の設置や光ケーブルの敷設などの設備工事に加え、大変なのは社員教育だという。

「たとえば、駅で入場できない状態のカードを持ってきたお客様への対応など、イレギュラー対応への準備が大変な部分だ。そうしたパターンは無数にあり、他の民鉄で起こっていることなどを事例集にして、覚えなければならない」(尾渡氏)。それでも、同社は6.6kmの完結した路線内での運行であり、より複雑なパターンを処理しなければならない相互乗り入れを行っている事業者と比べれば、対応はまだ楽なほうなのだろう。

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