交通系ICカード「導入費用」は半端じゃない システム検証や社員教育の負担も大きい

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このように多大なコストと煩雑な準備作業が発生するにせよ、ICカード導入には利用者へのシームレスな移動という利便性の提供に加え、事業者の側にも不正乗車対策による適正な利益の確保や、非接触式ICカードの特性による機器のメンテナンス費用の削減など、大きなメリットがある。

ICカード導入のコストを軽減する動きとしては、地域独自カードを導入済みの事業者が、少ない費用負担で10カードの片利用を導入できるようにするために、国交省が「片利用共通接続システム」の構築に関する方向性をとりまとめ、2017年3月1日付けで資料を公表した。

同資料によれば、事業者が共同利用できるシステムの構築により、個別事業者ごとの導入費用削減に加え、短期間での概算費用の提示が可能になることによる事業者の意思決定の迅速化等を図ることができるとする。

現在の状況等について、担当する国交省総合政策局公共交通政策部に問い合わせたところ、まず、片利用共通接続システムは、「相互利用のICカードが使えるエリア拡大のための方策の一つ」であるとした上で、現在、「独自のシステムの開発を国交省主導で進めているわけではなく、10カードのエリアごとに、それぞれの地域の実情に合わせて複数の交通事業者間で共用されるシステムができないか打診中」であるという。

今回は、それ以上の具体的な話は聞くことはできなかったが、地域で先行事業者が開発したシステムのいずれかを将来的に共通プラットフォーム化するという構想なのかもしれない。

インバウンド向けの取り組みも

次に、利用者の視点からのICカード利用促進に向けた動きとしては、中部運輸局が推進している外国人旅行者向けの「Central Japan Travel Card」の実証実験が注目に値する。

同カードは、10カードの一つである「manaca(マナカ)」をベースに、オリジナルデザインを採用し、観光スポット約600カ所で優待特典を受けることができるサービスを付加したカードで、2018年2月1日~3月10日までの38日間、2000円(デポジット500円、チャージ1500円)で、3000枚を販売する。行く先々での切符購入等の負担を軽減して回遊性を高めることや、中部エリアの観光ピーアールを目的とするもので、実験後は、カードの利用履歴から旅行者の周遊状況や利用動向を把握・分析する。

ただし、2月26日時点で、販売済みのカードは「400枚程度」(中部運輸局観光部)といい、広報・PR面に難があるようだ。「ジャパン・レール・パス」を補足するような利用になるのかもしれないが、興味深い取り組みだけに、広報が行き届いていないことは残念に感じる。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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