『動的平衡』を書いた福岡伸一氏(青山学院大学教授・分子生物学者)に聞く

『動的平衡』を書いた福岡伸一氏(青山学院大学教授・分子生物学者)に聞く

「生きてるって何ですか」の問いに、それは「動的平衡」と答えてきた分子生物学者が、そのものずばりのタイトルを冠した新刊を刊行した。ロング・ベストセラーの『生物と無生物のあいだ』とどう違うのか、「福岡生物学」の核心を聞いた。

--前2冊の新書と違い、今回は単行本ですが、売れ行き好調ですね。

それぞれの本の通奏低音に動的平衡がある。それが私のキーワード。この本は集大成といってよく、いわば決定版として語り直してみた。

タイトルは硬いが、内容は食べ物、ダイエット、健康、あるいは時間など、身近なトピックスに引き寄せて、動的平衡がいかに働いているか考え直している。

--動的平衡をざっくりと「定義」すると。

絶え間なく動き、入れ替わりながらも全体として恒常性が保たれていること。人間の社会でいえば、会社組織とか学校とか、人が常に入れ替わっているのにブランドが保たれている、そういうものをイメージしてもらってもいい。

近代科学は、生物や自然もミクロな目で見れば、部品が集まって機械じかけになっていると読み解いてきた。そこで大きく見失ってきたのが、生物や自然は時間の関数として常に動いていること。絶え間なくこちらと思えばまたあちらと動きながらバランスをとっている。

--動的平衡と考えれば、人々の立ち居振る舞いも変わりますか。

別の言い方をすれば、動的平衡とはテイク・イット・イージーということ。基本的に、この本は肯定的にある種の無常感を語っている。それは万物は流れていく。だからこそ、私たちはある種の希望が持てる。生物学が明らかにした世界観は希望をもたらすものと思っている。鎌倉時代に書かれた『方丈記』は、川はいつもそこにあるように見えるが、流れている水は二度と再び同じ水ではないとしている。そういうものとして生命があるのが動的平衡で、日本人は昔からそういう考え方に到達していた。
 

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