大暴落から米国の個人投資家が学んだものとは --リッパー最高執行責任者(COO) エリック・アルムクィスト
--グローバルに市場が大混乱となる中で、世界の投資信託業界は、今、どのような状況にあるのでしょうか。
現在、投資信託業界は過去に例のないほどの大きな落ち込みを経験しています。今の状況が続けば、運用会社各社にとっては深刻な事態となるでしょう。注目すべきはミューチュアルファンド、投資信託に対する新規の資金流入がどうなるかということです。昨年2008年は、僅かではありますが日本では資金は流入超過となりました。ところが欧州では大幅な資金流出を記録しています。欧州ほどのマイナスではありませんが、米国も資金は流出となりました。マネーマーケットファンドへの資金シフトが続いているのです。
多くの人は、これだけマーケットが下がったのだから、いずれ市場は復活すると期待しています。本当にそうなればハッピーなのですが、今の状況が続いてしまう可能性も排除は出来ないでしょう。誰もが先を見通せない状況です。
--日本は米国に学びながら、ここ数年、「貯蓄から投資へ」と資金のシフトが進められてきました。投資先進国である米国の個人投資家は、この市場急落をどう受け止めているのでしょうか。
直接保有であれ401kなどを通じた形であれ、米国では、誰もがミューチュアルファンドに投資を行っています。ドットコムバブルがはじけたことにより、ひとたびバブルが崩壊するとどれだけ損失が大きくなるかということを投資家は学んだのです。そのうえで、投資家はまたマーケットに戻ってきました。ドットコム株だけでなく大型株へも投資するといった「分散投資」を学習したのです。ところが今回は、資産クラスやファンドの種類にかかわらず、相関が極めて高くなってしまい、分散をしていたとしてもほとんど一様に価格が落ち込んでしまったのです。逃げ場はありませんでした。
ですから、今後の投信市場を見通すうえでカギとなるのは、「どのようにリスクを評価するか」という投資教育であろうと思います。人々は口をそろえて「非相関性」ということを語るようになるでしょう。この経験を踏まえたうえで、米国の投資家は再び市場に戻ってくるでしょう。
--投資信託評価会社としてのリッパーの特徴や強みとは?
リッパーの評価会社としての強みは、世界中のファンド、またそれだけでなくファンドの属する市場自体にも通じていることだと考えています。リッパーは投信の「定量分析」に重いコミットメントを置いています。情報の収集に際しても、可能な限りバイアスがかからないよう、中立的であるよう努めることがリッパーの特徴です。