日本政府の緊急支援策、事業会社の格付けにプラスか?《スタンダード&プアーズの業界展望》


 Q2:大手自動車メーカーが支援を申請すると報道されていた。流動性が逼迫しているのか?

昨年秋以降、世界の金融市場に混乱が広がり、企業の資金調達環境が厳しくなったのは事実だが、政府の緊急融資制度活用を検討していると報じられた大手自動車メーカーは、高い格付け・信用力を持ち、厳しい事業環境下でも十分なバランスシートや流動性を維持している。報道された支援申請は、あくまで各社の資金調達の選択肢を広げる目的であって、流動性が逼迫しているからではないとスタンダード&プアーズはみている。財務の強さや流動性の状況は個別企業で大きく異なるため一般化するのは難しいが、一部の欧米自動車メーカーが政府からの緊急融資に頼らざるをえなかった状況とは全く異なる状況と言っていいだろう。

一部の報道では、トヨタの金融統括会社、トヨタファイナンシャルサービス(TFS)がJBICに融資を要請したり、日産自動車が日本政策投資銀行の低利融資制度の活用を検討しているなどと伝えられている(いずれも会社が正式に発表したものではない)。上位の日系自動車メーカーは、邦銀から借り換えリスクの限定的な借り入れを中心に、引き続き十分な流動性を維持しているとスタンダード&プアーズは考えている。グローバルな金融危機は、邦銀にも悪影響を与えているものの、欧米の銀行に比べて資産リスクによるダメージが比較的浅く、自己資本比率維持のために資産を大幅に圧縮しなければならない状況にはない。このため、邦銀の大企業(特に優良企業や系列企業)への貸し出し姿勢は、短期的には株式相場の下落や貸し倒れコストの増加などのリスクにより、選別姿勢を強化する傾向にあるものの、引き続きおおむね良好である。中期的にも安定的な貸し出し姿勢が維持される見通しだ。

Q3:半導体大手のエルピーダは台湾や日本で公的支援の活用を検討していると報道されたが、流動性への懸念は高まっているのか?

エルピーダメモリは、台湾政府主導の業界再編構想において、台湾メーカーとの経営統合を通じて、当局による財務支援スキームの活用を図る方針と報じられている。また産業活力再生法を通じた日本の公的資金による資本増強スキームについても、資本増強の選択肢の一つとして検討を進める考えを示している。

エルピーダメモリは、2008年12月末で2000億円を超える手元現金を有しており、短期的な流動性に深刻な懸念があるわけではない。ただし市況の低迷を受けて、同社は2008年10−12月期まで5四半期連続で純損失を計上しており、財務の健全性は圧迫されている。同社の借入金には純資産維持条項が付されていることから、資本増強に向けた取り組みは格付け評価上も重要な事項と位置づけており、進展を注視している。

伝えられた公的支援については、どちらとも現段階では具体的な内容が明らかになっていないため、格付け評価に反映させるにはさらなる見極めが必要と考えている。ただし、これらの支援策が実現しても、メモリー市況の低迷が続き事業環境の悪化が深刻化しているなかでは、短期間で信用力を大きく改善させる効果は限定される可能性が高いとみている。

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