日本政府の緊急支援策、事業会社の格付けにプラスか?《スタンダード&プアーズの業界展望》

アナリスト  薩川 千鶴子
 中井 勝之

 
 世界の金融市場が混乱に陥り世界的な景気後退が加速するなか、日本の実体経済の悪化が懸念されている。こうした状況下、日本政府は昨年末から今年にかけて、企業向け資金繰り支援などの緊急対応策を相次いで打ち出した。スタンダード&プアーズは、政府が企業に対して資金調達の追加的な選択肢を提供することは、企業の資金調達環境が厳しくなっているなか支援を受ける企業の流動性に一般的にプラスと捉えているものの、事業会社の信用力への影響は限定的で、格付けに直接プラスに働くケースはほとんどないと考えている。本リポートで、海外の政府支援策に言及しながら、政府の緊急支援策に対するスタンダード&プアーズの見方を質疑応答形式で解説した。

Q1:日本政府の主な支援策にはどのようなものがあるのか?

これまでに発表された主な支援策は以下の通りである。
 1)政策投資銀行や商工中金を通じた大企業・中堅企業の資金繰り支援のために、日本政策金融公庫の危機対応業務の貸し付け枠を1兆円に拡大。また、政策投資銀行がCP買い取りを実施。

2)日銀による3兆円を上限とするCP・ABCPの買い取り、および社債買い取り(ただし、格付け「A格」相当以上で残存期間1年以内、買い入れ総額の残高上限1兆円、発行体別の買い入れ残高の上限は500億円)。

3)国際協力銀行(JBIC)による日本企業の輸出および海外事業支援のため、輸出企業向け信用供与や国内大企業を通じた途上国での事業に対する貸し付けの実施。さらに、途上国事業に加え、日本企業や海外子会社の先進国事業に対しても貸し付けや保証を行う。

4)日本貿易保険による日本企業の海外子会社の事業活動に対する資金的支援として、1年以上の運転資金の融資に対して、海外事業資金貸付保険を適用する。これにより90%をカバーできることになる。

さらに、政策投資銀行などの指定金融機関が、産業活力再生特別措置法の認定企業に出資し、その企業が万一破綻した場合には、政府が日本政策金融公庫を通じて損失の一部を補填するスキームを検討するなど、公的資金を活用した枠組みを拡大する方向である。

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