(第5話)舞妓さんの「間違いから学ぶ姿勢」を育てる言葉

 

●間違うことは恥ずかしいことやない、そのままほっとくのが恥ずかしいことや

 「うちかて、舞妓はんのときは、すんまへんと、日に何べん言うたのか数えられへんほどどした」と、すっきりした横顔に女らしさが漂う芸妓さんが、後輩の舞妓さんに話しています。

芸妓さんが「毎日朝から晩まで、何十回も何百回も失敗を繰り返す自分のことが嫌になり、自分は舞妓さんにむいていないと悩んだこともあった」と言うと、うつむき加減の舞妓さんが、はっと顔をあげました。

この芸妓さんは舞妓さん時代に、「間違うことは恥ずかしいことやない、そのままほっとくのが恥ずかしいことや」と、置屋のお母さんから教わったそうです。「ほっとく」というのは京言葉で「放置する」ということ。つまり「間違うことや失敗することが恥ずかしいことではなく、失敗したことを認め反省せず、そのままでいいと放置することこそが恥ずかしいことだ」と言われたのです。

「すんまへん」と自分の失敗をその都度認めていると、いつまでたっても上達しない自分にイライラすると同時に、そんな自分を恥ずかしいと思ってしまいます。すると、失敗に気がつきながらも、それを繰り返す自分が情けなくて辛くて、失敗をなかったものとして見逃してしまう気持ちが浮かびます。また、失敗の原因を他人のせいにして自分を納得させてしまえば、それはそれで済んでしまいます。お姉さんやお母さんから指摘されたら、「すんまへん」としおらしく謝ってしまえば事足りる、という思いにもつながります。

自分が傷つかないようにという思いから「失敗をスルーする」ことは、自分で自分を貶めてしまうだけでなく、これからの歩みに大きな落とし穴を掘ることにもなることを、この芸妓さんは置屋のお母さんから学び、それを新人の舞妓さんに伝えたのです。

「すんまへん」と新人の舞妓さんが言えるのは、自分がした間違いがわかるようになったからです。仕事を遂行する上で自分の力の足りないところが少しずつ理解できるようになり、新人の舞妓さんの能力がアップしている証拠なのです。

周囲から指摘される前に失敗に気がつけば、当然謝る回数は増えます。辛い気持に流されずに、そこで同じ失敗を繰り返さないように気張れば、技能の向上に弾みがつきます。本人にとっては停滞しているように思える何百回の「すんまへん」は、新人舞妓さんの種が花街という土の中で根を張りだしたサインなのです。

ここでぐっと踏ん張れば、そう遠くない将来、しっかりした双葉が地面から顔を出すはずです。それがわかっているから、お姉さんやお母さんは、舞妓さんの様子を見守りつつ、根腐れしないように言葉をかけているのです。

宮川町のお茶屋:鴨川沿いに位置する宮川町は舞妓さんが多く在籍している。祇園に近いにもかかわらず、観光客がめったに来ないため、比較的静かな風情を楽しむことができる。

 

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