木本:それを計算してやっていたのはすごいなあ。
御厨:国会は「その政策はしかし」と嫌がるけど、小泉は世論調査の結果を突きつけて「俺にはこれだけの支持率があるんだよ」と言う。「今回の政策もこれだけ支持があるよ。それでも反対、じゃあ解散しようか?」と脅すと、議員みんなそれは嫌で、賛成する。徹底してテレビと世論を使いました。
木本:小泉孝太郎君とお仕事をした時に、お父さんのお話をちょっと教えてもらいました。バラエティ番組をすごくよく見るそうです。とにかくテレビが好きだって仰ってました。ここは大きいですよね。
御厨:大きい。そのまま使えると彼は思った。郵政解散も、彼は最初から解散をするつもりだった。参議院で否決されて解散しましたが、法案を通すための努力を彼はまったくやっていない。
木本:えー、やっていなかったんですか。それは初耳です。
御厨:やらずに寝てた。最初からむしろ逆に、否決さえしてくれたら解散できると思っていた。だから否決されたら、ホントに喜んだそうです。
木本:で、怒っているパフォーマンスして。役者ですね。
御厨:役者です。郵政解散の時に、テレビに向かって最初に解散の理由を言いました。それが「ガリレオ・ガリレイ」という一言。
木本:アー! 言いましたね。
御厨:後から考えると「えっ」と思うんだけど、ああいううまさも全部自己演出できたんでしょう。
木本:参謀役がいたんですか?
御厨:全部自分だと思います。参謀にプロデュースされたら、本人にあれほど勢いはでないでしょう。
アベノミクスは風だけ
木本:最後に現役首相の話を。安倍さんは、僕の中では小泉チルドレンのイメージがあるんですが。
御厨:スピリッツとしては持っているでしょう。安倍さんは小泉政権でようやく政治家として認知された人ですから。彼にとってのお師匠さんというのは、小泉しかいない。
木本:やっぱりそうなんですね。
御厨:第一次政権の時、インタビューをしました。いろいろしゃべってくれましたが、「小泉さんばりのワンフレーズポリティックスはどうですか?」と聞いたら、その瞬間に暗い顔をしてね。小さく「アレは小泉さんのパーソナリティだからな、俺にはああいう才覚ないし」と言ったんです。
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