アフリカの視察団が集まる下町工場の秘密 「良い現場」は最高のセールスマンになる

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作業台やごみ箱にはキャスターがついています。移動できるので、掃除が容易です。そして必要に応じてレイアウトを変更し、作業場所に機材を集中して効率的な仕事ができます。

現場事務所の机には引き出しがありません。ハサミやホッチキスなどを共有化し、いつでも誰でも取り出せるよう台車上にきちんと置かれています。数も決められていて、マジックは2本、ガムテープも2つしか買わず、無駄を省いています。「箱買い」をしたのにどこにあるか分からず、再発注していたのが改善されました。

「以前は探し物に何十分もかかっていました。だれが持ち出したかを聞いて、その人を探す、という2度手間も多かったのです。今では、どんな道具も60秒以内に持ち出せます」

そう話すのは、2代目の山田茂社長さん。「3S運動」を推進した立役者です。ごみ一つ落ちていない、ピカピカの工場の床を見ると、確かにそのノウハウを教わりたくなります。でもこの徹底ぶり、実はやらざるを得ない必要性から生じました。やむにやまれぬ会社の事情があったのです。

売り上げ95%減の逆境に

山田製作所は、ステンレスや鉄アルミ素材のものなら何でも作る町工場です。山田社長は、8年間の機械商社勤務を経て入社。業績も順調で、1998年1月には過去最高の売り上げを記録しました。従業員の家族も一緒にハワイ旅行を楽しむほどでした。

ところが、帰国後わずか10カ月で風向きが変わります。頼り切っていた注文先からの注文が激減し、売り上げが95%もダウンしてしまったのです。会社始まって以来の緊急事態に、当時専務だった山田社長は後から入社していた弟さん(雅之氏・現専務)と共に、飛び込みセールスをやりました。しかし、お客さんからはこう言われたそうです。

「機械はない、技術は平凡、値段も安うない。山田さんのところの強みはなんやねん!」

自分の父親の会社なのにセールスポイントも言えず、黙って帰らざるを得ませんでした。

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