崖っ縁!シャープ 資産の切り売りは避けられず 9月危機は回避できそうだが…
しかし、8月3日、事態は暗転する。鴻海が「シャープへの出資条件を見直す」旨、単独で表明したのだ。
無理もない。3月に合意した「1株550円」からシャープの株価は大幅に下がっていた。当初条件どおり出資すれば、鴻海はその瞬間に巨額の含み損を負う。前日の8月2日には、シャープが13年3月期の業績予想を大幅に下方修正。最終赤字が300億円から2500億円に膨らむ見通しと発表しており、さらなる株価下落は必至だった。
郭董事長は3日、東京で片山幹雄会長らシャープ幹部と協議し、出資条件の見直しで合意。鴻海の株主への説明責任を果たすべく、台湾証券取引所に公告を掲出した。
だが、株式の発行価額を現状に近い1株200円前後まで引き下げれば、発行株数を増やさないかぎり、鴻海からの調達資金は予定より400億円以上減る。といって、株数を増やせば、出資比率は9・9%を超えてしまう。
資金確保を急ぎたいが、鴻海の影響力を抑えたいシャープと、出資比率は上げたいが、急ぐ必要のない鴻海との間で、時間だけが過ぎていく。
鴻海が手を引けばシャープの再建シナリオは宙に浮く──このことを危惧する銀行が示したのが、冒頭の「8月末」というデッドラインだ。
実際には、交渉決着は9月以降にずれ込む可能性が濃厚。だがその場合でも銀行が追加融資を行わないわけにはいかない。シャープが立ち行かなくなるからだ。主力2行は8月の660億円に加え、8月末に1300億円、9月末までに1000億円規模(いずれも2行の合計)の追加融資を検討中。だが実現したとして、それらはしょせん「“つなぎ”でしかない」(主力行幹部)。