2016年は「住宅バブル」が終焉する年になる 新築にも中古にも異変の兆しが現れている

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特に2014年後半からは、成約価格が在庫価格を上回る水準で推移してきた。これは2006~2007年の「ミニバブル」と呼ばれた時期と同じ傾向である。

成約価格が在庫価格を上回る状況は、ほぼ売り主の言い値で売れたことを示す。中古マンションの場合、売り主がどうしても価格を高めに設定しがち。その強気の価格設定でも売れていた、というわけだ。

ミニバブル崩壊直前と状況が酷似

ところが、ここに来て、この傾向が崩れ始めている。成約件数の伸びに鈍化が見られる一方、新規の登録件数は依然として多いため、在庫がミニバブル崩壊直後の水準まで積み上がってきている。

さらに東京カンテイによれば、東京23区の中古マンションで、直近3カ月のうち一度でも値下げを行った物件の割合(価格改定シェア)が、じりじりと上がってきているという。特に2015年10月以降、その割合が、ミニバブルの崩壊が始まったときと同じ、30%台の水準に近づいている。

不動産コンサルタントの長嶋修氏は、バブルかどうかはもう少し検証が必要としつつも、中古マンションの価格は天井圏に達していると指摘。「売ろうと考えている人は1秒でも早く売ったほうがよい」と警告を発する。

一方、「バブル崩壊には至らない」と見るのは、東京カンテイの井出武・上席主任研究員だ。中古価格は天井圏を迎えているので、3~5%程度の調整は必至。ただ、ミニバブル後のような“崩落”ではなく、マイルドな“調整”で終わるという。消費増税前の「経過措置」が16年9月から始まり、駆け込み需要が発生すると考えられるからだ。

新築マンションも、ミニバブル期は価格上昇につれてより安価な用地を求め、物件開発が都心部から郊外に移っていった。

が、ここ数年の開発は都心部・駅近に集中しており、面としての広がりは乏しい。資材や労務費の高騰により、埼玉や千葉では採算が取れなくなっているためだ。

ミニバブル崩壊前には400社はあったデベロッパーが、現在では150社前後にまで減少している。大手の寡占が強まる中で、不採算案件の施工も減ってきており、ミニバブル崩壊時のような業者の投げ売りは考えづらい。

本来ならバブル終焉によって価格急落となるところを、来秋からの消費増税前の駆け込み需要がいくらか緩和するかもしれない。だとしても、2016年のマンション市場は2017年以降に向けた波乱含みの展開となりそうだ。

「週刊東洋経済」2016年1月9日号<4日発売>「核心リポート01」を転載)

筑紫 祐二 東洋経済 記者

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ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

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