アルビレックス新潟の奇跡:池田弘が語る人と組織の育て方(第2回)--指導者は「先生」ではなく、「インストラクター」であるべきだ
これは、どんな分野でも同じです。たとえば、デザインの世界ならどうやって感性を磨くかということが大事になってきますが、そのためにはトップレベルのものに触れることが必要です。それを実現するには、海外研修にも行かなくてはなりませんが、そこで「お金がもったいない」「親に反対されたし、面倒だから行きたくない」と言っていては、始まらないわけです。
また、いろいろなコンテストなどに参加させることで、チャレンジの機会を多く作ります。すると、プロもいるコンペで優秀賞を受賞する人なども実際に出てきており、がんばれば一流のデザイナーになれるという事例が生まれるわけです。同じ人間なのだから。その気になってやれば、トップになれる可能性が非常に高いということを実感させるわけですね。
そして、そのための目標を立ててその通り進ませます。税理士になりたいのであれば、限られた時間で必死に勉強しなくてはなりません。そのためにはどんな勉強をどのくらいしなければいけないか、いつの模擬試験でどれくらいの点数を取らなければいけないかといったシナリオができあがってくる。あとは、それを実行すればいいのです。自らそういう計画を立てることによって、一人ひとりが進んでやるようになります。だからこそ、高い合格率を実現できるのです。
--逆に、人を指導するときにやってはいけないことというのはあるのでしょうか?
私は、指導者は「先生」であってはいけないと思っています。常に最先端の研究をしている場合はいいのですが、多くの場合、その人の持っている知識というのは2~3年も経てば古くなってしまいます。そんな向学心の欠けた人からいくら教えられても、生徒の心には響かないでしょう。また、その陳腐化した知識を振りかざして「どうせ俺には追いつけないだろう」という気持ちで指導しているのは、お互いにとってよくありません。これは会社組織などにも言えるでしょう。