業種ごとの対象社数、女性部長比率の平均値、男女別の合計部長数を集計した。全社の合計人数は男性部長数12万7190人に対して女性部長数は3421人。前年の2627人からは増えているが男性に比べて圧倒的に少ない。
それでも6割近くは「女性部長ゼロ」
女性部長比率の全体平均は2.29%と前年2.10%からわずかにアップ。しかし、今回の集計では、対象1090 社のうち645社が「女性部長ゼロ」。全体の59.2%が「男性部長のみ」という状況だ。
前年は対象1000社中611社が「ゼロ」で61.1%だったので進歩はしているが、マネジメントの要である部長職での男女格差は依然大きい。
対象社数10社以上の業種で最も比率が高いのはサービス業6.04%(81社)。保険業5.72%(13社)、その他金融業5.20%(12社)、情報・通信業4.58%(75社)、小売業4.47%(92社)、などが続く。
一方で低い業種は鉄鋼0.11%(16社)、金属製品0.14%(18社)、建設業0.19%(58社)、非鉄金属0.21%(14社)、ゴム製品0.48%(11社)などだ。
前年比では上昇している業種も多いが、それでも女性比率が最も高いサービス業で部長100人に女性は6人程度。下位の業種では1000人に1人といったお寒い状態だ。
今回ご紹介したいくつかのランキングでも女性部長の絶対数は少なく、先進企業でもその歩みは遅い。また大きく伸びている会社は少なくとも5年前には一定の女性比率だったという現実もある。
こうした点から考えると、もともと女性比率が低い会社で現在数%の女性管理職や部長比率をいきなり数十パーセントに上げるのは不可能に近いといわざるを得ない。
女性幹部を増やすもっとも簡単な方法は中途採用だが、「部長などの幹部の中途採用はプロパー組のやる気を削ぐ」(中堅上場企業・女性管理職)といった不満の声も漏れてくる。
また、男性に比べて女性の所属部署が偏っているという問題もある。たとえば、製造業では採用時に女性の理系比率は低く、配属が管理部門に集中しやすい。管理職に昇進する場合もそれ以外の部署には行きにくく、女性を幹部に登用するポジションに困るという状況になりやすい。
女性活躍推進は政府の方針でもあり一足飛びに対応しようとする会社が少なくない。そのため今在籍している女性社員をできるだけ早く登用しようとして、問題が発生することもある。
本来、日本企業は着実に一歩一歩積み上げていくことに強みがある。女性活躍だけ時間をかけずに達成しようとしても難しい。
まずはこれまで男性が多数派の営業、製造といった部署で女性配属を増やし、部署間の男女比の格差をできるだけなくす。続いて、その中からじっくりふるいにかけながら候補者を見つけ幅広い職種で管理職に登用していく。こうした地に足をつけた取り組みが成功の王道だ。「候補者が存在しない環境で女性幹部は増えない」ことは肝に銘じたほうがよさそうだ。
今後、人口減で労働力が大きく減少する日本にとって、女性幹部の増加は社会の活力の面からも間違いなく必要だ。ただ、通常の日本企業では10年以上の長い取り組みになるはず。地道な積み重ねで真に強い会社が生まれてくる。10年後の優良企業を目指して各社の今後の取り組みに期待したい。
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