特に高学歴者はそうである。一党独裁で民主制移行の見通しがつかない中国の政治状況に、未来を見ることができないのかもしれない。太子党というエリート2世勢力の台頭に見られるようなエリート階層の世襲化と権力の固定化が顕著になれば、余計そうなるだろう。
辛亥革命のリーダーである孫文は、日本に亡命していた。その意味で日本は重要な役割を果たしたのだ。これからも同様のことができるはずだ。
日本から見れば、能力の高い中国人との協力関係を作れるということだ。シリコンバレーでは、それが実現してIT革命が起こった。日本でも、同様のことができるはずだ。
経済規模の面で中国と張り合うのは無意味だ。同じ分野で競争するのも無意味だ。見通しうる将来において中国が日本より豊かになることはないのだから、分業関係を確立できるだろう。
21世紀は、米中というG2がリードする時代になることは否定しえない。しかし、日本はのけ者ではない。世界の方向付けに重要な影響を与えられる。それが、日本の未来をも左右するのである。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)
(週刊東洋経済2012年8月25日特大号)
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