問題多い「政府の投資回収が狙い」のJAL再上場--再上場を急ぐより経営が「逆戻り」しない体制構築が先決《小幡績の視点》
今後、重要なことは、JALとANAおよび他の航空会社を含めた航空産業が効率よく経営され利益を生み出し、経済全体の成長をもたらすことである。そのためには、3つのことが重要である。
まず、第1に、ANAをさらに成長させることである。現時点では、JALよりもANAは利益の規模がかなり小さくなってしまった。これは政府の介入によってもたらされたものであるが、しかし、だからJALに与えたベネフィットを剥奪して元に戻せ、という必要はない。むしろ、逆に、ANAをさらに効率よい企業になるために環境を整備することが重要だということだ。
つまり、JALの利益回復の1つは、政治や行政の論理で持ち込まれた不採算空港や不採算路線から撤退できたことである。したがって、これをANAにも積極的に認める。飛ばし続ける必要があると政治的に認められる場合には、その補助費用を明示化する。
ANAは今回、公募増資をすることを発表した。これは戦略的投資のための資金調達であり、金融市場でも評価された(希薄化により株価は下落したが、過去の事例に比して、株価下落幅は小さくとどまったと言われている)。
すなわち、資本市場もANAの経営の効率性を評価しており、今後、ANAに関しては、できるだけ自由度を確保し、彼らのビジネスに関して、障害を取り除くという政策を採るべきである。
昔のJALに逆戻りする懸念も
一方、JALの再上場は、これと対照的だ。この再上場が問題なのは、JALの利益が出すぎている、過大評価か否か、ということにあるのではなく、再上場の目的が妥当ではないということにある。