問題多い「政府の投資回収が狙い」のJAL再上場--再上場を急ぐより経営が「逆戻り」しない体制構築が先決《小幡績の視点》
同時に、航空産業の発展のためにも、産業全体のためにもよくないという議論もある。なぜなら、すぐに政府に救済を求めるというモラルハザードを起こす可能性があるからだ、という理屈である。
ANAを含めた航空業界の収益性向上が重要
しかし、ここで重要なのは、過去ではなく、未来である。
JALの公的資金による救済は、普通の状況でないことは間違いがない。しかし、JAL職員のリストラや給与カット、年金削減への同意、あるいは銀行の債権放棄なども、政府がコミットメントを持って介入したことにより実現した。と考えれば、政府の救済によって初めて可能になったとも言えるから、救済自体が悪かったわけではなく、非常にプラスサムのベネフィットをもたらしたと言える。
ANAとの競争環境として問題になるのは、単なる不公平という議論ではなく、ANAよりもJALを優遇すると、経済成長力を低下させる恐れがあるという点だ。
なぜなら、自力で利益を上げられた企業と、救済される必要があった企業においては、前者のほうが明らかに効率的な企業であり、そちらに資本を投下するのが、経済全体の資本の効率を上げ、経済成長をもたらし、経済全体にとっても政府としても望ましいはずだ、ということだ。
したがって、これから将来にわたって、より効率的な企業に、資本や人的資源、そしてビジネスチャンスが集まるようになるべきだということが重要だ。