大量の「偽装日本人」が、安全保障を揺るがす 増加の一途をたどる「二重国籍」の根深い問題

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日本の国籍法は二重国籍を認めていないのに、現実には二重国籍者の数が増え続けている。制度自体に不備があるかというと、そうではない。アメリカを例にとると、日本人の親からアメリカで生まれた子の場合、日本人の親は日本でも出生届を出し、子の戸籍を作る。戸籍には出生地が記載されるので、行政はどの国で生まれた子かを把握できる。国籍選択の期限を把握することも、もちろん可能だ。

また国際結婚の場合も、日本人の戸籍に結婚相手の国籍が記載されるから、結婚により二重国籍となった場合も把握できる。

国籍法は、「期限までに国籍を選択しない場合、法務大臣が書面による催告をしてから1カ月以内に日本国籍を選択しなければ、日本国籍を剥奪できる」と規定している。行政がこの権限を発動していれば、二重国籍放置はありえない。だが、過去、日本国籍剥奪どころか、国籍選択の催告すら行ったことがない。問題の根本は、まさに行政の「怠慢」にあるのだ。

実際、日本政府は「戸籍から重国籍者を把握することが可能である」と答弁している。そして2008年の国籍法改正の際、国会で「重国籍のあり方について検討する」との附帯決議がなされたのに、問題が放置されたまま、二重国籍者は増加の一途をたどっている。

本人が報告を怠ればそれまで?!

さらに深刻なのは、偽装日本人の問題である。偽装日本人というのは、日本国籍がないにもかかわらず、日本と他国の二重国籍者であるように偽装している外国人のことである。正式な統計はないが、相当数存在すると推測されている。

前述のとおり、国籍法は、もともと日本国籍を有していても、外国への帰化や外国市民権の取得など、自らの意思によって外国籍を取得した場合、日本国籍を喪失すると規定する。日本国籍を喪失した者は、戸籍法に基づき、本籍地役場などに国籍喪失届を提出しなければならない。

国籍喪失届が提出されると、その者の戸籍が除籍される。しかし、アメリカをはじめとする多くの外国政府は、日本人が自国に帰化した事実を日本政府に報告しない。その場合役場側は、他国の国籍を誰がいつ取得したのか把握する術がない。したがって、本人が届出を怠ればそれまでだ。

戸籍が残ったままになれば、それを利用して日本国のパスポートを不正取得できるし、加えて新たに国籍を取得した国のパスポートも取得可能という状況が出来上がる。

こうして、日本国籍を喪失しているにもかかわらず、一見すると日本国籍と外国籍の両方を有しているかのような外観が発生する。このような国籍(実体)と戸籍(手続)の乖離をついて、日本パスポートの不正取得・不正行使、不法入国を繰り返す偽装日本人が後を絶たない。

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