大量の「偽装日本人」が、安全保障を揺るがす 増加の一途をたどる「二重国籍」の根深い問題
法はなぜ二重国籍を認めていないのか。たとえば日本と、日本と利害が対立する国の両方で選挙権を有する状況を想像してみてほしい。二重国籍者は、日本の利益ではなくもう一つの国の利益のために、日本で投票をすることが可能になってしまう。
犯罪や脱税に悪用することも可能だ。二重国籍であるということは、日本国のパスポートを持ちながら、他国からもパスポートの発給を受けられることを意味する。複数のパスポートを使い分ける犯罪者の違法行為、脱税などを容易にしてしまう。
そのほか、兵役義務、忠誠義務、義務教育などにおける衝突や、身分関係が国ごとに別々に管理されることによる重婚の発生、外交保護権の抵触なども問題となる。
また、日本とA国の二重国籍者がA国でテロに巻き込まれたような場合、その者はA国にとっても自国民の扱いになり、日本が外交保護権を行使できない事態になりうる。犯罪人の引渡しの関係についても、国籍を有する国については自国民という扱いとなり、外交上の問題が生じる。
「二重国籍」はどうやって発生する?
そもそも、なぜ二重国籍者が生まれるのか。二重国籍が生じる理由としては、出生により二重国籍を取得する場合と、出生後に国際結婚などの身分行為をすることによって自動的に取得する場合がある。
二重国籍状態が生じやすいのが、海外で生まれた日本人の子のケースだ。出生による国籍取得の考え方には2通りあり、どこで生まれた子かを基準とする国と、誰の子かを基準にする国に分かれる。前者を出生地主義と呼び、アメリカやカナダがそれに該当する。これに対し、後者を血統主義と呼び、日本やドイツのことを言う。
日本人の両親からアメリカで生まれた子が、二重国籍を有するということはよく知られている。また、父親が血統主義の外国人、母親が日本人という場合も、同様に出生時から二重国籍となる。
他方、出生後に二重国籍となる場合もある。たとえば日本人女性がイラン人男性と結婚すれば、自動的にイラン国籍を付与されるから、二重国籍となる。日本人女性が外国人男性と結婚した場合に自動的に外国籍を取得するかは、その外国の法律による。アフガニスタンやサウジアラビアなどは、イランと同じく、結婚により自動的に国籍を付与している。
それに対し、国際結婚したことで有名な道端ジェシカ(イギリス)、関根麻理(韓国)、井上晴美(メキシコ)、宇多田ヒカル(イタリア)、クルム伊達公子(ドイツ)、中村江里子(フランス)、浜崎あゆみ(アメリカ)各氏のお相手の国は、いずれも自動的に国籍を付与するようなことはない。
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