「潜水艦の定員削減」でそっと忍び寄る危機

技術の継承が後回しにされている

「ゆうしお」型潜水艦「あきしお」の潜舵 (撮影協力:海上自衛隊呉地方総監部)

日本を特徴づける表現はいろいろあると思いますが、「技術立国」というのはそのひとつでしょう。今、池井戸潤氏の『下町ロケット』がドラマ化もされ話題ですが、これも技術立国と、そこにかかわる人々の心意気を描いた物語だからかもしれません。

トップクラスの潜水艦を支える、日本の技術者たち

潜水艦もまた日本の技術者に支えられており、世界でもトップクラスといわれる艦が建造されています。たとえば、潜水艦のスクリューは「静粛性」と「推進力」という、相反する要求に応えなければなりませんが、日本のスクリューは、職工が100分の1mm、1000分の1mmという誤差を、計測機器ではなくの自分の手先で検知し、修正しています。しかし今、「これらの技術を、どう継承していくのか」が問われています。

刃物で有名な堺市のある工房では、女性の弟子を初めて受け入れ、技術の継承に取り組んでおられるようです。技術は「教科書を読んでそのとおりにやってみればできる」というものではありません。ガラス細工では、炉に入れられたガラスの色を見て「適温かどうか」を見極めると聞きます。刃物をつくる場合も同じだそうです。

時代が変わってきた今では、おそらく師匠が弟子にいろいろと説明し、教えていくのでしょうが、ある一線を越えて先に進むには、言葉にはできない「何物か」が存在します。ここで、武道や芸事でよく使われる「見取り稽古」という言葉が意味を持ってきます。見取り稽古とは、師匠の一挙手一投足、目の配りなどをじっと見つめ、後でそれをまねてみて、何物かを体得しようとすることです。

ここでいう技術とは、「ものをつくる技術」だけを指しているわけではありません。たとえば営業では、どのように契約を勝ち取ってくるのか、電話のかけ方、プレゼンテーションの仕方、相手方との面談ではどのように話を展開させていくのか、どのように相手の話に耳を傾けていくのか、などさまざまな技術が必要でしょう。

次ページ「技術の進化」が「技術の体得」を妨げる
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • 自衛隊員も学ぶ!メンタルチューニング
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
  • 最新の週刊東洋経済
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
三菱重工と日立 「統合」破談から<br>10年 製造立国の岐路

10年前に統合構想が破談になった三菱重工業と日立製作所。その後両社は対照的な道を歩み、2009年に伯仲していた時価総額は今や日立が大きく上回っています。本特集では明暗が分かれた三菱重工と日立を主軸に、製造立国・日本の生きる道を探りました。

東洋経済education×ICT