「潜水艦の定員削減」でそっと忍び寄る危機 技術の継承が後回しにされている

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書店では、多くのハウツー本が売られていますが、皆がこれを読んだだけでトップセールスパーソンになれるのであれば、苦労はないでしょう。やはり、トップセールスパーソンとそうでない方の間には、言うに言われぬ技術の差が存在します。後輩は、その差を埋めるため、トップセールスパーソンの営業に同行して、その技術を盗んでいくことが必要なのでしょう。

潜水艦乗組員の人数は、削減され続けてきた

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しかし今、この過程が失われつつあり、日本が誇る技術が継承されず、衰退の危機にあるのではないでしょうか。この問題は、潜水艦も直面しているのです。

現行の最新型である「そうりゅう」型潜水艦は、定員65名、その内訳は幹部10名、海曹士55名です。「そうりゅう」からさかのぼること44年前に就役した1600トン型の「おおしお」は、定員80名、幹部10名、海曹士70名でした。「おおしお」は「そうりゅう」型の原点ともいえます。なぜなら、「おおしお」は現在の潜水艦にまで受け継がれてきた潜水艦運用の基本的な考えに基づいて建造された潜水艦だからです。しかし、この「おおしお」から、現行の最新型である「そうりゅう」の間で、海曹士が15名削減されたのです。

人員削減の大きな要因のひとつは、科学技術の進歩に伴う自動化の進展です。潜水艦では戦闘配置や防火、防水といった総員が配置につく場合以外は、艦長、副長を除き、全乗組員を3つの哨戒直に配置します。各哨戒直には、その長である哨戒長とその補佐である哨戒長付の幹部(2名ないし3名)と海曹士を、特技と階級構成が各哨戒直でほぼ均等になるように分けて配置します。

定員が80名の時代、各哨戒直は26名で編成されていましたが、「そうりゅう」では21名になりました。自動化によってソナーを担当する水測員や魚雷、発射管を担当する水雷科員などが削減されてきたのです。

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