民主主義の危機打開に、住民投票制度の活用を

そこで「より悪くない」選択をするため、選挙では棄権を絶対に避けるべきなのは当然だが、それとは別に、この辺で日本の政治制度に直接民主主義的な手法も取り入れることを考えてはどうだろうか。具体的には住民投票制度の活用である。

住民投票は、代議制より有権者の政治的な成熟が必要とされるが、前述の反原発デモなどを見ていると、すでに日本国民はそうした成熟度に達しているように思われる。

住民投票制度には、その結果が議会や首長などの最終的な意思決定を拘束する「拘束型」と、結果を尊重して最終的な意思決定に生かす「諮問型」がある。

拘束型の住民投票は、日本国憲法第94条に違反する可能性があるが、諮問型ならその問題はない。

「『結果の尊重』は主観的な概念であり、その程度などを外部から客観的に評価することは不可能」という意見もあるが、もし多くの有権者が「議会や首長が住民投票の結果を尊重していない」と判断すれば、当然、次の選挙でそうした判断に基づいた投票行動を取ることが期待できるので、諮問型でも住民投票制度は非常に有効である。

現実に、東京都と大阪市で「原子力発電の是非を決める都民投票」など、住民投票を実現させるための運動が展開されており、その他の自治体でも、こうした方向に賛同する人々は増えている。

選挙で棄権する有力な理由として「投票しても何も変わらない」という感想がよく聞かれるが、住民投票の活用により有権者が新しい成功体験を得れば、民主主義も新たな力を注ぎ込まれることになるのではないか。

(シニアライター:福永 宏 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2012年8月4日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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