誰が得する?「ストレスチェック」の落とし穴 静かな船出に見えるが、実は波乱含み
「厚生労働省が推奨している調査票でさえ質問の精度は低い。はたして社員のストレス状況をどれだけ拾えるのか」。ある精神科医はそうつぶやく。
12月1日からスタートした「ストレスチェック制度」。従業員を50人以上抱える事業所に年1回、社員のストレスの状態を測るアンケート調査の実施が義務付けられた。目的はうつ病をはじめとするメンタル不調の予防にある。
現在、全業種平均で56%もの企業にメンタル不調を抱える社員がいるといわれるほか、過労うつなどの精神疾患での労災の認定も2014年度には史上最多の497件に上るなど、メンタル問題が深刻化している。
そうしたメンタル問題の温床となっているのが、心身にかかる過度のストレスだ。ストレスチェック制度は、見えにくい従業員のストレスをアンケート調査により“見える化”する。そして高ストレス者には医師との面談を促し、必要な場合は残業時間の短縮やより精神的負担の少ない職場への異動など、改善策を講じるよう医師から会社側へ意見を出す。
50人以上の事業所ということで、制度の対象者は二千数百万人に上る。企業の人事や総務担当者にとっては、マイナンバー制度に続き、煩雑な手続きを抱えることになる。
ストレスを正確に測る難しさ
12月14日発売の週刊東洋経済(12月19日号)の特集「ストレスチェックがやって来た」では、制度の仕組みや注意点に加え、こうした課題もピックアップ。制度運営の関係者はもちろん、ストレスチェックを受けようか迷っているビジネスパーソンにとっても、テストを味方にする一助になれるよう、精神医療の現場にも足を運び、スムーズな運営に何が必要かを徹底取材した。
12月1日の制度開始以降、早くもチェックをスタートさせた企業がある一方、第1回目の実施が2016年11月30日までと定められていることから、様子見を決め込む企業も多い。一見、目立った混乱はなく、静かな運用開始といった様相を呈している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら