父親の都合だけで家族を引っ越しさせるな

「単身赴任」は必ずしも悪いことではない

ご長男は大きな責任を感じ、親に感謝し、勉学に励まれると思います。これは一生ものなのです。逆に運悪く受験が不首尾に終わったり、ちょっとした歯車の狂いで人生がうまくいかなかったときに、すべてを親のせいにして努力を放棄し、一生親を恨む者がいるように。

上記は悲観的すぎると聞こえるかもしれません。しかし私は、本人の希望と親の教育方針のミスマッチで、不本意な結果になったケースを、たくさん見てきました。僅差による不合格でも、その後の人生は大きく異なるのが現実です。

長期的な視野に立つとき、親が大胆に子供を信じ、任せるタイミングがあるものですが、正中様の場合は、今ではないでしょうか。ただ正中家の場合、そうする場合の最大の「デメリット」が、「父親の居場所」問題でしょうか?

「父親の居場所」のための引っ越しはおかしい

確かに「家族が同じ釜の飯を食って」暮らせるのは、人の一生でもごく限られた期間で、親にとっても子にとってもとてもかけがえのない日々です。特に親からすれば、愛おしい子供たちと共に暮らすことが生き甲斐という人が多いように、子供にしてやりたいことはいっぱいです。うれしいことは共に喜び、子供が困っている時はそばにいて、できるだけ助けてやりたいと思うのも親心です。

しかしすべての家族が、このことを至上命題にするべきではありません。時と場合によりけりです。

まず子供が反抗期の時は親子の会話はどこにいても減るものです。そういうときは親が近くにいることよりも、親がいかに子供たちの幸せを優先して判断しているかを行動で伝えることが大切です。

また、子供たちと離れていても、「父親の居場所」は努力次第でつくれるものです。昔の話ですが私の知人は遠洋航海士で、半年に一度しか帰って来られない人でした。彼は息子の成長に合わせて、さまざまな方法で、親子の交流を試みていました。ある年代ではカセットテープに英語と日本語で、子供への語りかけを録音していきました。「マサオは今、何をしている時がいちばん楽しいですか? パパがこの前行ったスペインという国では、子供がね……」といった内容を聞いたことがあります。

マサオ君は母親が反対するサッカークラブを、父親の許可で入会し、ピアノの上達ぶりを父親に聴かせるのを、高校生になってもとても楽しみにする青年に育ちました。一緒に暮らしても、反抗期その他の理由で激しく争う親子に比べると、マサオ君の父親の方が存在感は絶大です。父親の精神的な居場所は、同居でなくとも実現できるのです。

正中様、ここで申し上げたかったことをおさらいして今回の回答を終えたいと思います。まずは、子供の意思を尊重してあげなければなりません。受験勉強の刺激、内申書、田舎から引っ越ししてなじめるかどうかなどより、はるかに重要なポイントです。そしてこれらの判断をされる際に、ご自身の寂しさも含めて十分に家族全員でコミュニケーションを取られることが重要です。

別居や同居といった結果以上に、子供の自分の将来に関する意思を尊重し、家族全員が納得できるコンセンサスを作ろうと努力することで、家族の絆が強まるものだからです。

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