まずあなたの悩みの一つである夫人が築かれた、すばらしい人間関係について考えたいと思います。これは彼女が福井から東京へ引っ越されたとしても、本当の友人関係なら、それで疎遠になることはありません。もしそれで疎遠になる関係なら、それだけの関係だったのです。
私は1年に1度会うか会わないかの、徒歩10分圏内にいる心友がいます。お互いの生活リズムが違い、ここ40年間も、やり取りの手段は主に年に数回の電話です。それはお互いにとてもうれしかったときや困ったときに、知らせたくなる間柄です。それでも私たちは、将来は一緒の養老院に入ろうと話し合うほど、心は通じ合っています。これは遠くの都道府県に住む友人にも言えることで、近くに住んでいつも気軽に会えることが、心を許し合ったり、困ったときに助けを求めたりできる友になれる絶対条件ではありません。
友情に住む距離は無関係
つまり夫人がせっかく築かれた友人関係を絶つことになるかというあなたの危惧は、取り越し苦労だと思います。もちろん近所に住むことで親しみが増すでしょうが、家族の同居・別居という問題を考えるうえでは、優先順位の低い問題です。悩みを一つ一つ、消していきましょう。
正中様、外国人が日本の企業で当たり前に働き、世界中で日本人が働いていない国を探すのは難しい今の時代に、“田舎もん”が東京で通じるかどうか悩んでいる場合ではありません。父親の転勤が日本中、又は世界中、いつどこへ行っても、その場で必要な人間関係が築けるための、場馴れする絶好の機会だと考えることもできます。
しかも子弟教育は高校受験が最終目標ではありません。人生は何らかの意味で、競争や勝負の連続です。しかも世の中は、実力だけで評価されない競争もザラにあります。途中入学者の内申書の評価は公平かなどと父親が心配しているうちは、それが家族の心配ごとになるのです。家族全員がマイナス志向になっても、ろくなことがありません。
父親としてそのような心配をするよりは、せめて王道で実力を磨くことに専念させるべきです。そして実力以外でも、運を手繰り寄せたり人を惹きつけることができる魅力的な人間性を磨くことに、家庭教育の主点を置くべきです。あなた自身が、今よりも大きな見地に立たれることをお勧めします。
このように並べ立てますと私の意見は、家族を東京へ呼び寄せるべきだと申し上げているようですね。ところが私は、正中家の場合は、あなたの単身赴任をお勧めする方です。
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