ロードスターがS660との接戦に勝ったワケ 日本カー・オブ・ザ・イヤーを10倍楽しむ方法

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けれども、「現行モデルでどのホンダ車を買うか?」と聞かれると、ブランド・イメージと製品が乖離してしまっていて、ホンダファンであっても首をかしげてしまう人も少なくないはずだ。歯に衣着せぬ言い方をすれば、「ホンダファンをいかにホンダ車のファンとして取り込むか?」が今後の課題だ。

その点、「S660」はホンダファンが抱くクルマのイメージに近いからこそ、高得点を得たのだろう。「S660」をきっかけに、ホンダというブランドとクルマを結びつけていくことに期待したい。

異例ともいえる、3度のCOTY受賞

一方のマツダは、リーマン・ショック後に経営的にボロボロだったところから、わずか4年でブランド・イメージを再構築した。2007年頃からクルマ作りを見直し、2012年にスカイアクティブを積んだ「CX-5」の登場以降、コツコツとブランド力を高めて、4年間でラインナップを整えて「ロードスター」で結実させた感がある。

実際、この4年でマツダは3度のCOTYを受賞している。COTYの過去の受賞歴を見ても、かなり異例だ。裏話をすれば、2012年に「CX-5」が発売された時点では、広告宣伝費ゼロという厳しい状況だった。ウェブ上ではCOTYに対して「自動車メーカーがカネをばらまいた」と批判する声も見られたが、それはまったく内情をわかっていない意見だ。例えば、当時のマツダに、バラまくほどの広報費などあるはずもなかったからだ。

もう一つ、実用的ではないクルマがCOTYを受賞したことへの批判も目にした。実際、「実用性」という点では、マツダ「ロードスター」も、ホンダ「S660」も、これ1台でこと足りるクルマというわけではない。

ただ、車を実用性だけで評価するのであれば、COTYのような賞は必要ない。極端な言い方をすれば、「ワゴンR」と「プリウス」と「ノア/ヴォクシー」を国民車に指定すれば済むはずだ。しかし、実用品でありながらも、嗜好品でもあり、日本の基幹産業でもある自動車を多面的に評価する、そうした側面もCOTYは持っていると、筆者は理解している。

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