ロードスターがS660との接戦に勝ったワケ 日本カー・オブ・ザ・イヤーを10倍楽しむ方法

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しかし、この試乗会は、日本で買える「いいクルマ」とプロが選んだ10台を同じステージで乗れる。クルマが好きでこの仕事をしている身としてはワクワクする瞬間だ。多くの人の手間も時間もかけていただいて恐縮ではあるけれど、こうしたテストの場を設けてもらえることで、テストステージや乗った日の天気の違いに影響されずに、同じ条件で最終確認ができる環境を得られることも重要だ。

マツダとホンダ、その差はどこに?

ルールや仕組みがわかったところで、そろそろ、話を本筋に移そう。今年、ロードスターが本賞を受賞した理由は、選考委員ごとにそれぞれ意見があるが、ロードスターへ10点を入れた人のコメントを総じてみると、「長年、夢のあるモデルを作り続けていること」、「自動車ファンの期待に応えたこと」、「マツダのモノづくりへの姿勢への評価」、「世界に評価されるクルマであること」といったコメントが多い。

一方、惜しくも受賞を逃したホンダ「S660」も、「夢のあるモデルであること」や「自動車ファンの期待に応えたこと」という意見は多い。「軽自動車の限られた枠の中で、スポーティな走りやクルマへの夢を実現したこと」や「走りのホンダへの期待を形にした」という点は、「S660」に対するユニークな点だ。ちなみに選考委員のコメントはCOTYホームページで閲覧できる。

マツダ「ロードスター」が442点、ホンダ「S660」が401点という僅差ながら、どこかに差があったとすれば、「しつこいマツダ VS. 新しいもの好きのホンダ」という点にあったと筆者はみている。

マツダはあわや倒産か?という時期が何度もあった会社なのに、しつこいまでにクルマ好きに訴えるロードスターを26年間作り続け、その火を灯し続けてきた。加えて、最近は「スカイアクティブ」といった新技術群、モノづくりを煮詰めるなど、もともとの情熱に製品としての完成度とブランド力が追いついてきたことで、高い評価を得たようだ。

これに対して、ホンダは新しいモノ好きで、だからこそ、何か新しいことをやってくれるホンダを好むファンも多い。だが、最近はあまりにもモデルの改廃が多く、最近は伝統のモデル名というのが少なくなってきている。幸い技術力が高く、ホンダのブランド力も強いから、一般の人にも、ジャーナリストにも、「ホンダファン」は大勢いる。筆者も、ホンダという会社は個性的で好きだし、情熱と技術力で新しい何かを生み出してくれることに、つねに期待をしている。

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