社内処分で幕引き急ぐ野村証券のぬるい体質
後手後手の対応
2カ月のタイムラグが生じた理由について、渡部氏は6月29日に開いた記者会見で「設立した時点では(発表を)考えていなかった。したがって、具体的な発表は6月になった」と答えた。インサイダー情報の漏洩は、野村にとって経営にかかわる重大な問題といっていい。それについて金融当局の調査だけでなく、野村が自主的に調査するか否かは、同社の企業価値を測るうえで極めて大きな要因だった。
とすれば、2カ月のタイムラグは経営に関する重要な事項を開示しなければならない「適時開示(タイムリー・ディスクロージャー)」の要請に、野村が応えていなかったことを意味しないか。国内トップの証券会社という立場を考えれば、その要請に積極的に応える必要性があるにもかかわらず、対応が遅いといわざるをえない。
野村は「初めは1件だったが、もう1件、もう1件と増えて3件になったから」という説明もしている。だが、今回の事案は件数の多さではなく、起きた事案の質の問題である。質を数に置き替える説明は意味を成していない。
さらに、本誌が取材によって得た情報と「3月末から独自に調査に乗り出していた」という野村の説明内容は必ずしも一致しない。6月29日の発表後、当局者からも「調査委員会の設置はもっと遅かったのではないか」という声が出ている。
ほかにも問題はある。渡部氏は、調査委員会の報告で明らかになった機関投資家営業部の規律の緩みについて、「把握していなかった」という主旨の説明を行った。だが、情報が漏洩した10年当時、渡部氏は子会社である野村証券の社長も兼任していた。それでいながら把握していなかったというならば、ガバナンスは機能していたのかという疑問が残る。
野村は発表した改善策の中で、こう記している。