社内処分で幕引き急ぐ野村証券のぬるい体質
「当局調査の妨げにならない範囲において、社内調査が行われていれば、より早期に課題を発見することが可能だったと推測される」
要するに、野村は「自社で起きた事態を調べたい」という自主的な発想を持っておらず、当局にそれを実施してよいかの確認すらもしていなかった。そんな野村の姿勢をいぶかる声は当局の中にもある。また、株主総会の2日後というタイミングで調査結果を発表したことにも批判が出ている。
幕引きではなく始まり
今回の改善策について、松下忠洋・金融担当相は「道半ば」という評価を下し、同相が求める野村の自浄能力にも「刮目して動きを見ていきたい」と評価を留保した。同様に、金融庁の幹部は「改善策は事態の幕引きではなく始まりにすぎない」と、野村が今後いかなる対応に出るのかを見守る姿勢を明確にしている。当局から今回の改善策や処分に関して「十分」という評価は、今のところ聞こえてこない。
野村は08年にリーマン・ブラザーズの欧州・中東部門などを買収したが、それが業績の足を引っ張っている。国際部門の損失を穴埋めするかのようにアクセルを踏み込んだ国内営業も疲弊する中、インサイダー取引への関与が明らかになった。この関連を必然的なものと見る向きは少なくない。こうした事態に対して、顧客企業が債券発行などの主幹事から野村を外す動きもあるようだ。
もちろん、情報漏洩は野村だけの問題ではない。6月29日に証券取引等監視委員会が、日本板硝子の公募増資に絡みインサイダー取引を行ったジャパン・アドバイザリーに課徴金を課すよう金融庁に勧告。これを受け、公表前の増資情報をジャ社に漏らした主幹事の大和は社内調査を実施すると発表した。日興も元執行役員が逮捕された6月25日に調査委員会を設置した。
両社に比べると、野村の姿勢は改善策の策定までこぎつけたとはいえ、「ぬるさ」が漂っている。その一端は今回のトップの発言内容にもみえてくる。そんな体質を引きずる限り、真の再生は期待できないかもしれない。同じ罪を犯したライバル2社にとって、今の野村は格好の反面教師になっている。
[+画面クリックで詳細チャートを表示]
(浪川 攻 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2012年7月14日号)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら