圧倒的な絶望、「子どもの貧困」の現場を歩く

母を入院させ、僕はひとりになった

だが、取材の中で貧困を抱える子どもたちと接するうちに、限られた税金の使い方として有効なのかと疑問が湧いた。

授業崩壊、勉強は塾で

学校現場では、経済格差が意外な問題を引き起こしている。

板橋区内の公立小学校5年生の亜子さん(仮名・11歳)は、算数の宿題をしながらこう不満を漏らす。

「あ~まただよ。こんな公式、まだ習ってないもん」

最近、学校の授業が成立していないという。クラスメートが床に寝そべったり、勝手に教室を出ていったり、教師が誰かを注意している隙に別の誰かが何かし始めたり……。その結果授業が遅れ、宿題には習っていない範囲が出されるのだという。そんな振る舞いをするのは決まって、学習塾に通っている子だ。

「塾に行ってるから授業を聞かなくても良い点数が取れるんだよ。金に頼りやがって」

そう文句を言う亜子さんに、中学生の兄が注意する。

「塾に行ってるからっていいわけじゃないよ。大切なのは予習と復習をしっかりすること」

妹を励まし、算数の公式を教える。目下の悩みは、学校の影響なのか、妹の言葉遣いが“ヤンキーっぽく”なってきたことだと苦笑いした。

モスキート音で排除

亜子さんのクラスでは暴力も日常茶飯事。でも一番嫌なのは、やはり勉強が進まないことだ。塾に行かない亜子さんにとって、学校は唯一の学びの場。悪いことをして教室の外に出されるほうが自習がはかどるのでは、とまで最近は考えるようになった。亜子さんはこう言い切る。

「電子黒板は税金の無駄遣い。先生もほとんど使わないし、そのうち誰かに壊される。もっと根本的なことを見直さないと」

亜子さんは、母親の離婚を機に板橋に引っ越ししてきた。母親は契約社員として働きながら兄妹を育てるシングルマザー。板橋に決めた理由は家賃の安さだ。都営三田線沿線で不動産屋をあたると、板橋に入った途端、家賃が下がった。教育熱心な保護者が多く、有名校も多数ある文京区や千代田区には、とても住めなかったという。

もう一つ大きな決め手になったのは、無料で通える児童館が多数あり、母親が仕事で遅くなっても安心できることだ。だから、「子育て支援」の名のもとに、児童館が乳幼児向けに変わると知ったときは、ショックが大きかった。移行に反対する保護者も多数いたが、区の方針は変わらなかった。

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