圧倒的な絶望、「子どもの貧困」の現場を歩く 母を入院させ、僕はひとりになった

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居場所が激減し、子どもたちが漂流している。その多くが、塾や習い事に通えず、放課後の時間を持て余す貧困層だ。貧困家庭の支援を行うNPOの活動拠点となっている、いたばし総合ボランティアセンター所長の篠原恵さんは、集合住宅やマンションの駐車場で夕方、ゲームをしている小中学生を頻繁に見かけるようになった。最近、耳を疑うような話を聞くという。

「たむろする子どもたちを追い払うために駐車場に“モスキート音”を流しているマンションが増えているらしいんです。社会で子育てをするという空気がなくなっていると痛感します」

行政のセーフティーネットからこぼれ、地域からも排除される子どもたち。貧困といっても、背景はさまざまだ。複雑な事情を抱えた子どもたちにこそ、家、学校、そして“第三の居場所”が必要だと言うのは、板橋区で無料塾を展開する「ワンダフルキッズ」代表の六郷伸司さんだ。毎週日曜日、子どもたちが勉強したり遊んだり、ルールをつくらず自由に過ごせる場所を提供している。

冒頭の啓太さんも、高校1年から通う。母親が入院してひとりで暮らす不安な気持ちを唯一、素直に吐き出せたのが六郷さんだった。「僕にできることは何でもするから」そう言って話を聞いてもらうだけで楽になったという。加えて、貧困や不登校など、同じ課題を抱えた子どもたちと触れ合うなかで、初めて前向きな気持ちになれた。

「昔は両親がいてお金の心配もない普通の人生がうらやましかったけど、今はこんな自分もアリかなと思える。いろんな人や価値観に出会えたからかな」

と、啓太さん。今は毎日授業に出席し、就職活動も始めた。クリスマスには母の病室を訪ねる予定だ。母が退院したら一緒に穏やかに暮らしたい、とはにかんだ。(編集部・竹下郁子)

※AERA 2015年12月14日号

 

 

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