塩田潮
小沢一郎・元民主党代表が衆参48人を率いて民主党を離党した。
先行離党の新党きづなや新党大地・真民主と合体すれば、「小沢新党」は衆参60人規模で、衆議院では民主党、自由党に次ぐ第3勢力となる。2003年に民主党に合流したとき、小沢自由党は衆参で30人弱だった。9年を経て、倍の数を抱え、再び「純化路線の小沢党」に立てこもる道を選んだ。
小沢氏の長年の持論は「政権交代可能な二大政党政治の実現」である。だが、自民党離党、新進党解党に続いて、3度も大政党を割り、やり直しを図るのは、70歳という年齢を考えれば、持論の達成が限りなく遠のく選択だ。
消費税増税反対や公約違反批判という主張は首肯できる面が多いが、党内の権力闘争で敗れると、手勢を引き連れてすぐに飛び出すという離党癖が今度も出た。増税最優先派が国民に見限られたときには出番が回ってくるのだから、国民の支持を確信するなら、党内で力を貯えながら粘り強く「二大政党政治の実現」を目指す手もあったはずだが、結局、「壊し屋」と「選挙の小沢」に回帰した。
6月の28~29日の発表の世論調査(共同通信と読売新聞)で、「小沢新党」には「期待しない」が79%前後、「期待する」が約16%だった。「国民は冷たい目」という評が多かったが、「選挙の小沢」は逆に「期待16%」という数字に小躍りしたのではないのか。
この局面での「期待」は、根強い小沢支持層と見ることができる。「16%」は参院選の比例区の得票数でいえば900万票前後となる。小沢氏はこれを見て次期衆参選挙で第3勢力の維持が可能と判断し、離党・新党に踏み切った可能性もある。小沢新党を核にして政界再編、政権獲得、二大政党政治実現の最終戦争という絵を描いているのかもしれない。
とはいえ、手あかにまみれた使い古しの「小沢戦略」だけでは「16%の期待」を将来にわたってつなぎ止めることはできない。「ドジョウ首相」に戦いを挑む小沢新党は、新生党、自由党に次ぐ政界再編仕掛け用の「3匹目のドジョウ」狙いだが、「小沢時代の終わり」という空気を打ち破って、もう一度、主役に躍り出ることができるかどうか。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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