不要PCに金脈探る「宅配リサイクル」の正体 あなたの家にもレアメタルが眠っている

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リネットが継続的に展開しているのが、通常は1箱880円(税抜き)に設定している中古小型家電の引き取り料について、原則としてパソコンが含まれる場合に限り、提携自治体との連携により期間限定で無料に設定しているキャンペーンだ。

今年5~6月に提携先のひとつである京都市と組んだ事例では、約1万台の中古パソコンやそのほかの小型家電約1万4000台などを集め、回収重量は116トンに上った。これは「資源有効利用促進法」によって定められている、既存のパソコンメーカーが主体となった回収制度の18倍のペースになった。

自治体の協力で回収率アップを狙う

「自治体が協力してくれる期間限定の無料キャンペーンには回収のパワーを上げる効果がある。これを効果的に仕掛けていくことで、パソコンをはじめとする小型家電リサイクルをもっと広めたい」と黒田社長。東北大学の中村教授は、「リネットジャパンのサービスは過疎地にも対応でき、小型家電リサイクル市場を促進していくうえで有効な仕組みの一つとなりうる」と評価する。

ただ、リネットにしろ、そのほかの小型家電リサイクルを手掛ける業者にしろ、悩ましいのは法律が制定・施行された前後に比べて、資源価格が下がってしまっている点だ。その分、ビジネスで得られる利益も下がってしまっている。

その厳しさの中で、認知度をいかに高めて、レアメタルをはじめとする資源の回収量を莫大に高められるか。欧米に比べてリサイクルが育っていない日本の静脈産業に活路を探る新鋭企業が課題を克服しないかぎり、小型家電リサイクル市場はいつまでも盛り上がりを欠いたままだろう。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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