「しくじり先生」出演者はなぜ愛されるのか? 制作陣が語る、しくじりを"転換"する秘訣
——金井さんは北野さんとはゴールデンからタッグを組んでいるんですよね。最初はどんな印象でした?
金井:シンデレラボーイですよ。
北野:そうですか?
金井:ADの頃って、「絶対に俺だってできる」と誰もが感じていると思うんですよね。それをたった6年というスピードでここまで来れるというのはすごいなと思いますよ。
番組名をひた隠しにしてオファーを続けた特番時代
——これは、「いくな」と思った回はありますか。
北野:特番の1回目をやったときから、「いくな」とは思いました。当時は、教科書の1ページをつくるのに、みんなで考えて1日がかりでした。いまやっている俳句も、当初はフォーマットが決まっていなかったので、「最後のまとめをどうしよう」とみなでいろいろ考えました。もともとMCのいない番組をつくってみたいという思いが強かったんですね。
最近、タレントさんの名前が頭にくる番組名が多いじゃないですか。MCのパワーに頼る番組ではなくて、番組自体がおもしろいんだぞと胸をはれる番組をつくりたかったんです。最近のテレビ業界の傾向として、「このキャスティングじゃ数字取れないだろ」って、よく言われるので。
金井:キャスティングのよしあしで企画を判断される傾向は確かにあるかもしれません。ゴールデンの番組名を並べていただくと気づくかもしれませんが、そういうつくりかたをされているバラエティー番組は少なくないと思います。
北野:なので、そうじゃない、視聴者のみなさんに番組を観てもらって、「番組自体がおもしろいじゃん」と思ってもらえるものを純粋につくりたかった。そうやって一生懸命につくってみたら、見終わったときに自分でもおもしろいと感じて、周りからも好評だったので、いけるんじゃないかと思いました。
——キャスティングはどうしているんですか。
金井:スタッフが出してきた先生案の中から選別して、候補者にコンタクトを取るのですが、実際にオンエアまでたどりつける方は、10人中1人いるかいないかです。
——そのときは「こういう風にいきます」という企画を細かく出しているんですか?
金井:いや、出しません。
北野:いまは、(「しくじり先生」はしくじりについて披露する番組だと)バレているのでそうもいかないんですけど、特番や深夜でやっていた頃は、番組自体が知られていないじゃないですか。なのに、「しくじり先生 俺みたいになるな!!」とタイトルを言ってしまったら、もう、どこも隠せない。「しくじり先生なんですけどぉ〜」と言ってもバレるし、「俺みたいになるなって番組ですぅ〜」と言っても難しい。
だから、はじめの頃はタイトルも内容も一切告げずに、「学校のように授業をする番組なんです」、「自分の経歴について、少しばかり話していただきたいのですが」とオブラートに包むだけ包んで先方の事務所に電話して、「1回会って話をさせてください」とお願いしていました。