ベイスターズが「ハマスタ買収」に込める意志

負の循環を絶ち、横浜と野球の関係は変わる

そんなことを考えてしまうのも、かねてからDeNAは、関内という横浜のど真ん中に存在する横浜スタジアムという立地にこだわり抜いてきたからだ。

「この土地には、日本大通り、横浜公園と、欲しくても貰えないような、素晴らしい名前を持った場所に恵まれている。どんなにおカネがあったとしても、歴史だけはお金では買えないんですよ」

参入当時、池田社長がそんな話をしていたことを思い出す。戦前にはベーブ・ルースやルー・ゲーリックがプレーした横浜スタジアムは、日本野球の歴史的にも重要な地である。こればかりはどんな優れた土地が欲したとしても、昨日今日ではどうにもならない。

以前、ハマスタが目指すべき球場像は、歴史的な概念の捉え方ではボストンレッドソックスの本拠地・フェンウェイパークであると聞いた。一方、都市型の公園球場という意味では、WBCの舞台にもなった港町・サンディエゴのペトコパークを参考にし、そのいい所を融合させた球場を目指しているという話も耳にしたことがある。

それらの球場では、試合がある時には、周囲の交通が完全に閉まり、球場のみならず、周辺のカフェやレストラン、ショップを含め、街をも飲み込んだボールパークに変わってしまう。野球の歴史を重んじ、球場の歴史を感じる。街に住む何世代もの人たちが同じ球場で同じチームを応援していくような、文化的な価値のある球場。そんな街と野球の形を目指していくということだろう。

地元“横浜”と共に生きていくという決意

今回のDeNAによる横浜スタジアム買収で、何よりも大きな意味を持つのが、ベイスターズという球団が、今もこれからも“横浜”と共に生きていくという意志をこれ以上ない形で明確にしたいうことではないだろうか。

TBS時代から抱えていた横浜スタジアム問題から、幾度となく本拠地の移転が取り沙汰されてきたベイスターズ。DeNAが親会社になった当時も、その本拠地横浜からの移転、とりわけ南場智子オーナーの出身地でもある新潟への本拠地移転の噂は、ファンの間でも耐えることはなかった。

参入当初から、正直な話、「よくわからない携帯ベンチャー」とみられがちなDeNAに対する偏見は強く、その球団の指針が、いくら地元密着を強く打ち出し、昨年からは「I☆(LOVE)YOKOHAMA」をスローガンに据え毎試合選手と共に声高に叫んでいたとしても、どこかで“スタジアム問題”が暗い影を落とし、ファン心理としては頭から信用することは懐疑的だった。

しかし、今回ある意味で失敗してしまえば会社が傾きかけない大勝負に打って出たことで、はじめて横浜DeNAベイスターズが、喧伝してきた“野球が人と人をつなぎ“、”人と街をつなぐ“存在になるという言葉の数々を素直に聞けたような気がする。そして、5年先、10年先、あるいは30年先の横浜とベイスターズのビジョンが、建前の話ではなく現実的な未来像として見えてくる。

そんな折に球団関係者から「もしかしたら来季からビジターユニフォームの胸マークから“DeNA”が外れるかもしれない」という話を聞いた。これは参入して5年が経ち、親会社がある程度世間に認知されたという表れでもあり、その先の球団の在り方を示すものと考えてしまうのは些か早計か。

現在のベイスターズは親会社であるDeNAに介助して貰いながら、よちよち歩きでなんとか歩き始めたばかりの状態であるものの、やがて目指すところは一人で歩ける、独立採算を目指していくことだろう。そうなれば、現在の日本の球団の存在意義である“企業の広告宣伝費”という名目を飛び越え、横浜DeNAベイスターズが、再び12球団で唯一企業名のつかない市民のための球団、“横浜ベイスターズ”へと、存在の定義自体がなっていく可能性は高い。

そしてこの球場買収から、横浜と野球の新しい関係が始まっていくことは間違いない。買収金額は最大で約98億円。過半数以上の取得を目指すが、逆に5割に満たなければ買い付け自体をやめて撤退する。“友好的”だということから、大丈夫だとは思いつつも、前半戦首位でもどんでん返しが起こりうるチームだ。最後まで予断を許さない。ポイントは株式の約6割を握る個人株主約600人の賛同が得られるかどうかだ。来年1月20日の買い付け終了の時まで、その推移を見守っていきたい。

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