ベイスターズが「ハマスタ買収」に込める意志 負の循環を絶ち、横浜と野球の関係は変わる

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球場側に辛抱強く交渉を続けてきたDeNAの球団経営を、地元の財界や株主まわり、そして球場の借地権を有する横浜市が評価し、現在未開発の部分をより発展させていく期待も含めた決断である、と考えるのが自然である。

買収で生まれるメリットとは

買収金額は最大で98億円であり、回収までに10~15年はかかる見通しといわれているが、それでもDeNAが横浜スタジアムを買収することで生まれるメリットは計り知れない。

これまでどれだけ人が入ろうと、入ってこなかった飲食収入、広告収入、販売収入が安定して得られることで、長期的なスパンで安定した経営が行える。その体制が整えば、チーム強化に使える補強額もどんどん増え、恒常的に強いチームを運営していける。そうなれば、中心選手に高い年俸も払えるし、「優勝できるチームでプレーしたい」とFA(フリーエージェント)で去っていくこともない。ドラフトで指名拒否を恐れ、誰も指名しない選手ばかりを獲りにいかなくてもいい。

そして、よりお客さんを増やし、グッズや飲食を買ってもらうために、さまざまなアイデアとホスピタリティが発展していく。球場でイベントを行う際には、横浜スタジアム経由で市と交渉しなければならなかったものが、球団が主体的に交渉できるようになり、よりスムーズかつアクティブに進められる好循環が起こる。

すでに報道されている来季以降の改修案では、『ベイスターズなのに、なぜ敵性色である(巨人の)オレンジ?』と疑問を抱かれていたシートの色がチームカラーの“横浜ブルー”に変更されること。そして2年後に迫ったグラウンドの人工芝の貼り換えも、総天然芝を導入するといわれている。

先日はじまった契約更改では、さっそく久保康友投手が室内練習場の拡大、雨天時に投手陣が走る屋内駐車場へ人工芝を敷くように求めていたが、球場にまつわるあらゆることを、選手やファンの要望のほか、専門家の意見も採り入れ、よりベターな選択を球団で進めていけるようになれば大きなプラスとなるだろう。

そして、これまで球団に最も多く寄せられた苦情でありながら、管轄外であることで発展できなかった「飲食のバリエーションの少なさ」に対しても、球団主導で展開ができることになることで、「シウマイ弁当」「みかん氷」に次ぐ名物が生まれることにもなる。

何より、ファンにとっては、球場に行くことで、そして、グッズや飲食を買うことが「ベイスターズのためになる」という単純なモチベーションが生まれる。球団に金を落とすため、わざわざ、“コンコースの屋台ポップコーン”(これだけが球場内で球団の収入になる飲食)ばかり食べていた殉教者的ファンは救われる。

さらに12球団で最も収容人数が少ない横浜スタジアムの席の増築は、安定収入を増やすためには絶対に必要な案件であるが、公園法による建ぺい率の問題で、これ以上の増築は不可能とされていた。そのことで地元経済界からは、MM地区に客席数4万人のドーム球場を建設するという構想も浮上している。

だが、それでもDeNAは横浜スタジアムの買収に踏み切り、現在も3000席から6000席程度の増築を検討しているといわれている。公園法の改訂など時代や法律・規制に則した問題と直に向き合うことで、例えば、隣接する市役所の移転問題を絡めた横浜公園の定義の見直しなど、何かしらのウルトラCを以てして諸問題をクリアできる算段を用意しているのではないかと勘繰ってしまう。

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