がん発症を疑う所見なし、県民不安解消に努力 福島県の小児甲状腺検査キーマンに聞く
福島第一原子力発電所事故による福島県民の不安の解消と安全・安心の確保を目的に昨年10月から始まったのが県民健康管理調査事業。その中で、小児甲状腺がんを見つける超音波検査に注目が集まっている。同検査は原発事故発生当時18歳以下だった福島県のすべての子ども(約36万人、県外避難者を含む)を対象に生涯にわたり実施される。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故をきっかけに放射性ヨウ素を体内に取り込んだ子どもの間で甲状腺がんが急増した経験を踏まえたものだ。
チェルノブイリ事故後の医療支援活動を通じて放射性ヨウ素の被曝による小児甲状腺がん多発の事実を突き止めた山下俊一・福島県立医科大学副学長(県民健康管理調査検討委員会座長)と、福島県の小児甲状腺検査で中心的な役割を担う同大学の鈴木眞一教授(同検討委員会委員)に、調査の目的やこれまでに判明した結果、課題について聞いた。
山下俊一副学長(左)と鈴木眞一教授(右)
--昨年3月11日の原発事故当時、18歳以下だった子どもを対象にした甲状腺検査がスタートしました。検査の目的と意義について説明してください。
鈴木 まず、ご認識いただきたいのは、現在実施している検査は「先行検査」と呼ばれるもので、現時点での甲状腺の状態を把握することが目的だということだ。通常、小児甲状腺がんが見つかるのは100万人に1~2人程度。チェルノブイリ事故で小児甲状腺がんが多く見つかったのは被曝の4~5年後からで、発症までには一定のタイムラグがある。私たちが事故後の早い時期から甲状腺検査に着手したのは、お子さんの健康を心配する県民の皆さんの期待にしっかりと応えていきたいという問題意識に基づいている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら