がん発症を疑う所見なし、県民不安解消に努力 福島県の小児甲状腺検査キーマンに聞く
--2次検査が必要になった子どもは186人になりました。2次検査ではどんな検査が実施され、どのような結果が出ていますか。
鈴木 全員を対象とした血液検査や尿検査のほか、必要と思われる子どもには穿刺吸引細胞診を実施している。血液検査はがんを調べるためのものではなく、甲状腺ホルモンの量をチェックすることが目的。ホルモンの分泌が多すぎたり少なすぎたりすると、身体に変調を来したり、しこりの成長に影響を及ぼすことがある。血液検査は、1次検査で一定の所見が認められた受診者に限って実施している。尿検査は食事からのヨウ素の摂取状況を調べるもので、摂取量が少ないと甲状腺の腫れにつながる可能性がある。細胞診は組織の特徴を判断するためのものだ。
これまでの2次検査では、がんを疑う所見はなかった。心配する保護者にはすべての画像をお見せしたうえで、納得していただくまで丁寧に説明している。ほかの医療機関に行ってセカンドオピニオンを得ることは否定しないが、私どもの判定が複数の医師による精度の高いものであることをご理解いただきたい。県外に転居しても検査を受けることができるようにすべく、各都道府県の専門の医療機関と協定を結び、精度の高い検査体制を構築していく。
他地域との比較研究は学会での重要課題に
--今のところ心配する必要はないとのことですが、米国の小児がんに関する教科書には「子どもの甲状腺で結節が見つかることは極めてまれ」「若い人で結節が見つかった場合は悪性のリスクが大きくなる」とも書かれています。
山下 記述自体は正しい。しかし、今回見つかった結節の悪性度は高くなかった。小児甲状腺がんの治療成績は非常に良好だということにも留意する必要がある。ほとんどの場合、手術などで治癒する。チェルノブイリ事故に際しては約6000人が甲状腺の手術を受けた一方で、亡くなったのは15人にとどまった。
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