オリンパス社長・笹宏行「当たり前のことを実直にやれば、必ず復活できる」
巨額損失隠しの責任を取り退陣した前経営陣に代わって、4月末にオリンパス社長に就任した笹宏行氏。急務となっている資本増強策など、立て直しに向けて不可欠の経営課題を聞いた。
──たいへんな時期に社長を引き受けられましたね。
指名委員会が候補者をピックアップし、結果として私が選ばれました。断ることは会社を捨てるのと同じ。それは絶対にできませんでした。
──不祥事が起こった問題の本質を、どう総括なさっていますか。
私は当時、経営に直接関与しておらず、実態を見ていたわけではありませんが、経営の構造的な問題として、ガバナンス(企業統治)が利いていなかったと思います。経営執行会議の決定事項が、説明が不十分なまま取締役会を通ってしまうこともあり、経営・執行・監督が正しく機能していなかった。第三者委員会で詳細に調べた結果を真摯に受け止め、経営体制を改革していきたい。
ただ、この問題については個人的に感じていることが二つあります。一つは、いかに仕組みを整えても、心が入っていないとダメだということ。どんなに完璧なガバナンス体制を構築しても、組織的にウソをつけばそれが通ってしまうこともある。だからこそ、経営の執行に当たる人間は潔癖すぎるくらいの倫理観を持たなくてはいけません。
もちろん、経営トップだけでなく会社全体での倫理観も重要です。そのためにコンプライアンス(法令順守)委員会を設置したほか、内部通報制度を拡充し、社外の通報受付窓口も作りました。こちらも制度を作ればいいわけではなく、中間管理層の意識改革が大切です。部下の意見をしっかりと聞き、真摯に答える。そういうことを率先することで、企業文化がいい方向に向かいます。
もう一つは、本業にしっかり取り組むことが大切だということです。不祥事が発覚したことで後ろめたい気持ちになっている社員も多いが、いちばん大切なのは自分たちの事業が社会に貢献しているという誇りを持ち続けることです。その気持ちを持っていれば悪いことはできません。仕事に対する前向きなモチベーションは、コンプライアンスにおいても最も重要だと考えています。