イオンが英テスコの日本店舗117店を1円で取得、“仕切り直し”で実った交渉
イオンは6月18日、英スーパーのテスコが日本で展開する店舗117店を1円で取得すると発表した。今秋にもテスコ日本法人(売上高550億円、資本金3.53億円)の株式の5割をイオンが取得する。
テスコは4000万ポンド(1ポンド125円換算で約50億円)の追加資金を投入し、店舗リストラを加速。従業員(社員542人、パート1339人)の雇用は継続する。昨年8月にテスコが日本事業の売却方針を表明してから10カ月。合意成立の陰には、当初の条件では成約が難しいと見たテスコが、価格その他で大幅に譲歩した仕切り直しの交渉があった。
昨年は中四国首位の食品スーパー、マルナカ(グループ2社)を買収、パルコにも出資するなどM&Aを否定しないイオンが、当初から取得先の最右翼と見られていたのは、東洋経済でも何度か報じた通り。昨年秋のテスコの一次入札ではイオンのほか、セブン&アイ・ホールディングスやドン・キホーテが残ったとみられる。ただ、「不採算店が多く、従業員や店舗内テナントの専門店をどうリストラするかを勘案すると、タダでも高い」(業界関係者)という実態がネックとなり、売却成立には至らなかった。
そこで年明け以降、テスコはイオンに的を絞り、ほぼ独占交渉の形で売却条件を詰めてきたもよう。2005年に仏カルフールが撤退した際も受け皿となり、イオンマルシェとして黒字化させた実績や(店舗は現在すべてイオンに看板替え)、グループにコンビニや小型スーパーなど多様な業態を持つ総合力が評価されたようだ。
M&Aの世界ではありうる話だが、「備忘価額(nominal sum、その国の通貨単位での最低価格)」での譲渡と、50億円の追加リストラ費用負担、そしていったん折半出資のJVを組むが、いずれは全株式をテスコが(イオンに)放出する「2段階撤退」などのスキームが、ここで組まれた。
テスコが本国で発表したリリースにも明記されてはいないが、日本法人が現在持つ2百数十億円の負債も、「イオンが出資するまでに完済することになっている」(イオン)という。折半出資でイオンの子会社とならないのは、役員数を多くするなどでテスコが経営権を維持するため。
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