成城石井は、なぜ「安くない」のに売れるのか

こだわっているのは、たった一つの本質だ

成城石井は、輸送中の温度がワインに影響を与えないよう、常に温度を一定に保つ「定温輸送」でワインを輸入することにした。だが当時は定温輸送などよほどの高級品でなければ行われておらず、商社の取り扱い金額も高かった。そこで自社の貿易会社を作り、直輸入を始めた。輸送後の保管状態にもこだわり、定温管理の倉庫を建造し、24時間、温度や湿度を管理し、記録している。

ワインをいい状態で販売できるようになった後に求められたのが、「ワインに合わせるもの」だ。チーズ、オリーブ、生ハム、チョコレートなど、成城石井は独自の商品を仕入れ、品揃えを増やしていった。

お客に会社の都合は関係ない

筆者が成城石井の何人もの社員を取材して感じたのが、経営者からお店の販売員まで、どの人も言うことが同じということだ。

口をそろえるのは「お客様のため」というキーワードだ。「お客さまにご満足いただく、お客さまに喜んでいただく。それだけを目指し、動いている」特に創業の地、成城(東京都世田谷区)は都内でも屈指の高級住宅街であり、そこに住む人たちの食に対する興味や関心は高いものがあった。先ほどのワインの話もそうだが、本物志向で、妥協はしない。「高くて良いもの」というだけでは不十分で、「いいものを適正価格で」が求められた。

成城の人たちをいかに満足させるか、それが成城石井のルーツと言っていい。店舗数が増えても、駅ナカのような新たな形態の店舗ができても、今もその姿勢はまったく変わっていない。求められていることに、とにかく1つひとつ応えていく。やらなければいけないこと、基本を徹底する。そしてそれをひたすら継続する。

その姿勢をまさに地で行く話を耳にした。たとえば首都圏で大雪が降ると、一般的な小売りの物流は麻痺してしまう。雪でトラックが動けなくなってしまうという物理的な理由だけではない。通常の動きに乱れが生じると伝票の処理が一気に複雑になるため、配送センターが配送を止めてしまうことはよくある。それはいわば店や会社の都合だ。

成城石井はそれをよしとしない。商品を欲しがっているお客に対し、処理が複雑になっても、まずは商品を届けるのを優先し、伝票処理などは後回しにする。用意さえ整えば出荷する。ある店に商品が足りない。しかし近くの別の店には余っている、というようなときは、店員がその商品を運ぶこともあるという。

店同士もライバルではないのか、店ごとの売り上げなども関係してこないのかと思ってしまううが、お客には関係のない会社や店の都合など気にしないのが成城石井の考え方だ。

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