「電動推進機を採用した実験艇E-Watatsumi」クルマやバイクだけじゃない船も電動化の波、ヤマハのマルチパスウェイ戦略
心臓部とも言える推進機には、ヤマハ発動機が24年に買収したドイツの電動推進機専業メーカー「Torqeedo」社の製品を使用している。モーターとプロペラが一体となって水中に沈み込む構造で、回転する部品がすべて水の中にある。これにより、中程度の速度で走っている間はほぼ無音だという。風の音と会話や音楽だけで楽しむマリンレジャーは優雅そのものではないか。
ヤマハにはすでに「HARMO(ハルモ)」という別の電動推進ユニットもある。こちらはゆっくりと走る遊覧船などに向いており、Torqeedoはある程度の速度を出す船に使うという使いわけが想定されている。用途に応じた複数の技術を並行して育てていくという、ここにもヤマハのマルチパスウェイ戦略が表れている。
実験を重ねることで得られた成果は具体的な数字にも表れている。実験当初と比べ、1時間全力で走るのに必要なバッテリーの量を、当初の4分の1程度まで抑えることができたというのだ。電力消費効率を4倍にすると言えば、電動モビリティの開発に携わる技術者が聞けば、なんとも羨ましい夢のような数値ではないだろうか。
ヤマハはボートショー会場内で、水素を燃料とするエンジン船外機も展示しており、ここでもマルチパスウェイを鮮明にしている。電動船の場合、バッテリーを水素燃料電池に置き換えることも理論上は可能だ。
将来への投資を惜しまない企業姿勢
今回のボートショーにおけるヤマハ発動機のブースコンセプトは「いつまでも青き、海と人を。」である。青く美しい海を守り続ける人、そしていつまでも青く活力がある人――。そんな人たちを応援したいという思いが込められている。
アメリカ市場における関税影響や需要停滞という逆風の中にあっても、ヤマハ発動機はワイヤレスステーションやコネクテッドサービス、電動推進、FRPリサイクル技術といった革新的な取り組みを着実に積み上げている。新興市場での需要拡大、国内教育拠点の整備、そして持続可能なマリンライフへの投資。これらは短期的な業績の波に左右されることなく、長期ビジョンの実現に向けて一歩一歩前進していくという同社の強い意志の表れである。
「信頼性と豊かなマリンライフ、海の価値をさらに高める」という長期ビジョンの実現に向けて、ヤマハ発動機のマリン事業は確実に歩みを進めている。
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