東海原発で事故が起きたら日本は滅ぶ、原発に頼らない地域づくり目指す--「脱原発」宣言をした村上達也・東海村長に聞く
その渦中で村長になったので、私の第1期目の最大の関心は平成の大合併と原子力安全問題だった。
動燃の事故後、原因究明と再開問題に取りかかり、そのときから原発の安全性確保が最大の私の役割だと思っていた。すると、今度は99年9月にJCOの臨界事故が起きた。その時に私がいままで付き合ったことのない、原子力ムラの人たちに出会うことになり、「これは異常な世界だ」との考えを深めた。
それ以前から閉鎖的な社会だとは思っていた。たとえば、私が日本原子力産業会議で「原子力と地域社会」といったことについて発表しようとしたとき、日本原子力発電の人たちがやってきて、私に「発表文を書きましょうか」と持ちかけてきた。
私は痩せても嗄れても、選挙で選ばれた地域社会の代表。それに対して、発表文を書いてあげます、はないだろうと思った。
従前から日本が原子力科学技術を持てる能力があるのか疑問を感じていたので、JCO事故後、国がこの事故をどうやって総括して、新たな制御体制を作るのかを見ていた。原子力安全・保安院ができたので、コントロール体制は以前より改善されたようにも思ったが、福島第一原発事故ではあのざまだ。
しかも、九州電力・玄海原発や北海道電力のプルサーマル問題でも保安院が先頭に立って推進の旗を振っていた。規制機関が先頭に立って推進するなんていう国ではダメでしょう。
原子力ムラの中での地位と名誉をと組織を守る、という観点しかない中では規制はできない。できないくせに再稼働とくる。私は昨年6月18日、海江田万里経産相(当時)の「安全宣言」でこの国はダメだと見切りを付けた。
■東海原発で事故が起きたら日本は滅びる
--原発がある自治体では東海村は特殊だと主張しておられますね。
米国で原発を作ったときの1つの基準は人口稀薄地帯であること、もう1つは避難計画が立てられることだった。ところが、日本原子力発電(原電)の東海第二原発では半径10キロメートル圏内に25万人、20キロメートル圏内に70万人、30キロメートル圏内には水戸市があるから100万人が住んでいる。そもそも、そんなところに建てるのがナンセンス。まさに原理原則を無視した建て方だ。
損害賠償にしたって、福島第一原発事故では15万~16万人が避難していて、政府は2兆5000億円程度と損害額を算定しているけれど、実際には5兆~6兆円になるとも言われている。となれば、東海第二で事故が起きた場合本当に賠償ができるのか。そんなことやったら国は滅びてしまうだろう。